●婦人自衛官やその他の女性との出会いは?
俺たちのころは婦人自衛官っていうのはまだなかった。
もうまったく、女っ気なし。国語の先生が一人いたかな。
あとは部隊の本部に何人か事務員がいたぐらい。
だから、ほとんど女はいないね。
年に1回お祭りがあって基地を開放すると、一般の人が来るんだけど、
そのときに、たとえば女子高生たちが遊びに来たりするでしょ、
ナンパしようとするんだけど誰も声の掛け方知らないわけ。
ただうろうろするだけ(笑)。
おまえ行けよ、おまえ行けよって、やってるだけ。
だから、女性関係だけは、妙に欠落してんじゃない。
だから、本宮が男になったぞって聞いたときには、みんながこのやろー!って。
かといって自分達はどうしたらいいんだって…、わからないのよ。
3年生になって…、3年の後半に専門教育を受けるのね。
今度は職種に分かれて、みんなそれぞれ部隊っていうか学校に行くわけ。
俺は浜松。AC&Wって。
レーダー、飛行機探す捜索レーダー。警戒管制ってやつ。
その浜松の学校行ったときに、今で言う売春宿の名残があって、
みんなそこでだいたい男になるわけ。
だから、素人さんで男になった同期ってのは少ないんじゃないかな。
みんなプロだね、最初は。
兄弟多いと思うよ、そんなのみんな平気だもんね。
100人が2年間か3年間のあいだに…、
いわゆる自分のプライバシーなんかないようなもんだよ。
なんだろ、一番最初にびっくりしたのは、
入った隊舎って、米軍のお古だったの。
トイレのドアなんてないのよ、大便するところの…。
ほんとに馬のゲートみたいに仕切りがあるだけ。
そこでもう…朝全員が並んですまたでぱっぱっと座ってて、
紙よこせだの、なんだかんだやってるわけじゃんか。
もうすでにその段階から、すっぱだかのつきあいなのよ。
はずかしいことなんかなんもない。
冬なんか一番最初に座るのやだから、
誰か座ってあっためとけーとかさ。
そんで、そいつのあとに行くとかさ。
そういう意味じゃ隠すものなんかなんにもないもの。
だから、やっぱり仲良くなるよね。
なんだろうね…一言で言えば、変な世界。
●そのころの仲間はどんな人たち?
みんなクセのある連中だけど、
どっかで自分は優秀だったってのを持って入って来てるから……。
事あるごとに辞めたるぞ、辞めたるぞって言ってたんだけど、
1年たったら、辞めた奴ほとんどいないんだ。
行くとこある奴以外はね。
まあでも、すごいなあーと思ったのは、
みんなそうなんだけど、その100人?
家から仕送りもらってた奴一人もいないんだよね。
みんな、なんだかんだ言って16から自立してるわけ。
辞めた連中でもそういう自立心があるのかな、
半数くらいは社長になってるな、自分で会社起こしたり…。
人に使われるのをあんまりよしとしないっての、けっこう多いね。
自立心は異常に強いね。
1年目、2年目のときの悪グループで、一人、逃げた奴がいたんだけど、
こいつがさ、またつっぱり野郎でさ、度胸がないのわかってんだけどさ、
そいつが俺もう辞めたって、
脱柵(外出したまま帰らない、いわゆる脱走)するぞって、
そしたらみんながあいつ度胸ねえから逃げるわけねえだろうって、
じゃあ賭けようってことになったんだよ。
そしたら、そいつが、
よし、じゃあ俺が脱柵すると思う奴、手ぇあげろって言ったら、
誰も手ぇあげなかったんだよ(笑)。
そいつ引くに引けなくなって本当に帰ってこなかったの……。
で、しばらくしたらどっかで
補導されて小隊長が迎えに行って帰ってきたんだけど。
そーいった変わった奴が多かったね。
●本宮先生との出会いころの思い出は?
あのね、やっぱつっぱる奴なのよ、最初から。
っていうか、先輩に一番目をつけられるの。
体ちっこいんだけど、ほんとに迫力あるから。
目がすっごい切れる目してるから、鋭い目してるから。
そうすると、目つきが悪いって殴られるんだよ。
それで俺たちも、本宮の目つきが悪いんで、
俺たちがしぼられるんでたまんないわけだよ。
だから一番先輩には目をつけられてたし、だから辞めるときに、
あいつだけは許さねえってやってたけどね。
やっぱり存在感はあったよ。
ちっこいわりに…、リーダーシップあるし、やっぱりただものじゃないなって。
俺は、そのへんをチョロチョロチョロチョロ、
いいほう行ったり悪いほう行ったり…(笑)。
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