●入隊したのを後悔してますか?
でも、自衛隊入ったおかげで、田舎では覚えられないことを…、
はずかしいことばっかりだよ、田舎にいたらさ。
たとえば自衛隊入って最初に喫茶店行って、メロンソーダ? 見たときにさ、
うわー、緑色の液体なんか飲めるのかいって、
しかも、上にアイスクリームのってるぞって。
このね、感動たるや、あのまま高校行ってたら、
あと3年間、それにお目にかかってないわけだよな。
それと、当時米軍のあとだから、
すでにコーラがあったわけよ、コカ・コーラが。
で、コーラを飲んだときに、なんでこんな物を飲むのか、
こんな薬臭いものをとかさ。
あと、やっぱり食事がさ、田舎の食事と全然違うわけ。
ちゃんとカロリー計算したもの出るでしょ、そのときにやっぱり。
食べる物に関しては、出て来てよかったーってかんじだよな、
うん。(しみじみと)
あとは、やっぱり自分の買いたい物は買えたからね。
後悔してたら怒られちゃうよね。
だって、現実に自衛隊入ってなかったら本宮に会ってなかったし、
会っていなければこういう商売やってないわけだし、うん。
だから、ある意味で…、
俺の人生のキーポイントってのは、家が貧乏っていうのと自衛隊に入った、
この二つがもうすべてだよな。
貧乏で違うところに丁稚奉公に行ったら、また違う人生だろうし、
たまたま自衛隊あったから自衛隊行ったら、本宮がいて、
それで一つの人生が結びついているわけだから。
うん、ターンニングポイントは二つあるね。
まず、家のその…、いろんなハンディキャップと、自衛隊入ったって、
それがターニングポイントだろうなあ。
まあ、辞めたってのもあるけどな。
辞めたってのは所詮、俺向いてないから。
どー考えたって俺、自衛隊向いてないわ。
人を使うのやなんだもん。
使われるのも使うのもやだから。
この学校を出てくと中間管理職を養成する…、
下士官ってのは中間管理職みたいなものなわけ。
いわゆる班長クラス。
小隊長にはならないけど、班長でやれってのを作るわけでしょ。
そうするともう、一番俺にとって嫌な部署でしょ。
上から言われ、下を見なきゃいけないって……。
どうせなるんだったら大将になればいいのに、
そんなのなるのは防大生しかいないって……。
●原作者になって、そのころが生きることってありますか?
なんだろうね〜。
体力か…、それとけっこうねばれるかな。
1回肉体的にもう絶対これ以上は無理だってとこまで、
やられるわけじゃんか。
それでも…、へとへとになってんだけど、
夜になってオナニーしてんだ、みんな(笑)。
そんときに、人間ってけっこうしぶといぞって。
そうするとなんかね…。
ある意味では自分に対する…、
肉体的なものも含めて、精神的なものも含めて、
やっぱタフになってるよなってのがあるよ。
だから、辞めてプータローになってるときも、
不思議に生活に対する危機感ってないのよ。
何やっても食っていけるぞって。
俺ぁ、いざとなったら屋台でもひけるよっていう、
それがどっかにあるの……。
とにかく、食うためだったら俺なんでも仕事やるぞって、
そういう妙な精神的、肉体的タフさは一番できたかもしれないね。
それが一番よかったんじゃないの。
たしかに今でも、(肉体的には)無理かもしれないけど、
精神的なものとしてはなんでもできるぞってのあるよ、うん。
それは、多分、しぼられたおかげなのかな。(しみじみと)
投げられないって状況だからね。
ここで俺が手をあげちゃったら他の連中もやられるって…、
他の連中がもっとひどいめにあうっていうと、投げられないんだよ。
そうすると、やっぱりトコトン行ってみようかなってのがあるしなぁ。
(自衛隊は)一つの教育機関としてはある意味おもしろいぞ。
戸塚ヨットスクール、あんな感じよ。
あんなのも必要悪かもしれないでしょ。
一つの教育機関としては、必要であるかもしれないと、
俺は思ったりもするけどね。
だから、くそ生意気なガキどもとか…フラフラしてるの、
一度でいいから入ってこいやってのはあるよね、直るぞって。
一度でいいから、自分のワガママがきかない世界体験してみろよってのは。
ただな…もうちょっと勉強しておけばよかったかな(笑)ってのはあるよな。
※本文中( )内の表記、および[編集メモ]漫画街。氏名敬称略。
記録に誤りや漏れなどありましたら、ご指摘ください。
(第2回 終)
★次回は『デビューのころ』のお話をお聞きする予定です。お楽しみに。
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