●創刊のころのヤンマガの思い出は?
俺と弘兼さんと柴門さんががんばってるころは、
いつ廃刊になってもおかしくないくらい売れてない次期だからさ。
で、『酎ハイれもん』で、編集部的には一息ついたんだって、
あとで聞いたらね。
そのころに、単行本を厚くしてスペシャル版で500円の本にしたの、
今、主流になったけど…。
それで『酎ハイれもん』がある程度売れたんでちょっと一息ついた。
そしたら、きうちかずひろ君(『BE-BOP-HIGHSCHOOL』)が
ボーンと出て来て、そっからもうヤンマガの黄金伝説…、
それがドンと始まったって感じだよね、83年くらいか。
だから、やっぱりそれまでの3年間?
3年間くらいはいつ廃刊になってもおかしくなかったんじゃないの。
ただ、編集部は面白かったけどね、異常に(笑)。
マガジンの一番奥にさ、
壁で仕切られたちっちゃいスペースがあってさ、
そこに全部押し込められてて…、
これ、本当に編集部かよってところに
4〜5人くらいしかいないじゃない、編集が。
それで、そいつら全部飲んべで…。
だからある意味、なんかちっちゃいその疎外されたエリアの戦友達
って感じがあってさ、すっごい面白かったけどね。
最初のころは、編集者みんな2〜3本担当してたんじゃないかな。
だから、最初の2〜3年はみんなで本当に苦労してて、
そうこうしてるうちに、
大友克洋だとかきうち君とかが入って来て、
だんだん形態的によくなって来たって感じだよね。
でも、あとで聞いたら、
本当にぎりぎりのラインでやってたって言うからね。
俺らはそのころ、書いててそんなに気がつかなかったんだけど、
楽しいからわぁわぁ騒いでやってたんだけどね…。
最初の謝恩会のパーティー?
ホテルの本当にちっちゃな1部屋借りて…、作家だけなわけ。
若い作家ばっか集まって…、
で、誰も(アイドルとか)呼べないから、
バイトの女の子達? の学生バンド。
その子達がライブやって、そこで若い作家達が飲んでたんだから(笑)。
それはそれで楽しかったけどね。
だから余計、ある意味では戦友って形が出来てるよね。
梁山泊的に…、メインからはずれてるんだけど、
異様になんか元気があってさ、いずれどっかに行くぞっみたいな…。
だから、作家同士もすっごい仲良かったよ。
ある意味、体育系の感じがあって、だから続いてたんじゃないのかな。
弘兼さんも他で売れてもずっと連載やってたでしょ。
だから逆に、俺とか弘兼さん、
編集部もどっかで切るに切れなくなった次期もあるよね(笑)。
だって主流が若手にシフトして行ったじゃない。
俺とか弘兼さんとか柴門さんとか、ほとんどいらないんだけど、
なんだかんだ言ってやりませんかとか言ってくれてたから。
(史村先生の書かないヤンマガが想像できない次期もありましたよね)
俺もそう思ってたからね。
きうち君とか出て来て、若いのがどんどん出て来たときに、
まっ、押さえでもいいから、当然、俺はいるはずだっていうか、
いるべきだってのはどっかであったからね。
この本は絶対大事にしたい本だってのはあったけど、
ただ、いかんせん流れが前に行っちゃうとやっぱり使うほうも使いにくいし、
俺自身、書くほうも書きにくくなるから仕方ないことだけど…。
本当にきうち君の出てくるまでだね。
だから、ヤンマガがやっと売れ出したころのパーティーじゃあ、
弘兼といっつも、
今日のお酒が飲めるのはきうちさんのおかげですって、
歌ったんだから(笑)。
●『酎ハイれもん』
【編集メモ】
*『酎ハイれもん』 1982(S57)年21号〜1984(S59)年1号 ヤングマガジン 漫画/しのはら勉
中年の熱血刑事と女子高生のハートフルな恋物語。
これもまた、自分の願望なのよ。
ちょうど自分が40歳近くなって来てて…、
これ、女子高生との恋愛の話でしょう。
だから、なんか自分の書きたいものっていうか、あこがれがあって…、
はたして40前後の中年と女子高生が恋ができるかってのがあって、
それを刑事ドラマに絡めたら、うまいことポンポンポンって行ったから。
なんだかんだ言って、けっこう自由にやらせてもらってますね。
『酎ハイれもん』のストーリーに流れる音楽はオールディーズっていって、
最初話したときにただじゃつまんないから、じゃ毎回テーマを決めよう、
テーマを一番作りやすいのは音楽のタイトル、
それをバックに流そうって…、
それを「オンリー・ユー」だったら、「オンリー・ユー」の
サブタイトルで行こうよって始めたんだよ。
そのとき、若い編集がメチャメチャ面白いって言ってやったんだけど、
その後が大変なのよ。楽曲の許可取るのが。
毎回、あいつアメリカに電話して、
楽曲の権利どこにあるのか調べなきゃいけないわけ。
そりゃあ大変だったみたいだよ、許可取るのは。
俺は勝手にこの曲で行きたいってやるわけだから。
ずいぶん違うところで苦労したみたい。
ちょっとおしゃれな…、初めてじゃないかな、
そのころ、ラストシーンに必ずその曲を流すっていう漫画は。
年代的にオールディーズで育ってるわけでしょう、俺自身が。
あの年代のオールディーズの曲って、すっごいポピュラーでしょ。
だから、話に詰まったときも、楽曲のタイトルずっと見てるわけ。
そうするとなんか良いものが入ってくるわけよ、
いいイメージが。
「UNCHAIN MY HEART」、ううん?
チェーンかけないでってことは、
自由にしといてくれって意味だろうな。
あっ、面白いなとかさ、
そういう形の発想がすーっと出て来るわけ。
そのタイトル見てるだけでも、
一つのストーリーを想定するきっかけになったんで、
あれはいい方法だったね、今思うと。
●『ASTRONAUTS』
【編集メモ】
*『ASTRONAUTS』 1984(S59)年6号〜1986(S61)年2号 ヤングマガジン 漫画/沖一
『ファントム無頼』の宇宙飛行士版ストーリー。
『ASTRONAUTS』は編集が…、
まったく宇宙に興味ないって人がいきなり、
スペースシャトル展があるから、見に行こうってさ。
何それ? あんた宇宙の宇の字もわかんねえだろうよって(笑)。
いや、面白いからって、
それで無理矢理連れてかれて、
俺、それ勉強するのやだからさって言ったら、
勉強はこっちがやるからって、
じゃあ、『ファントム無頼』を宇宙でやっちゃうかって話になって、
そのパターンだね。
あれもいい話になったよね。
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