【質問と解答】

Q:実は、描くスピードに悩みがあります。
ある雑誌に今月は特別40ページをもらいました。
描くだけで、大変に厳しい事になった。
ネームと下書きで20日近くかかりました。
ギリギリ月末で40ページを終わりましたが、 なんか質を保てない気がする。
私はアシスタント歴はないし、月に2、3日手伝いに友だちが来るが、せいぜいベタとトーンをやるだけ。
背景を描けるアシスタントじゃないし。
しかしあるプロもほぼ同じ条件で 週刊ペースで月70ページオーバーで描けると聞いた。
しかも別に手抜きの描き方にも見えないし。
それは、どんなの描き方でしょうか?
それとも私のネームや下書きのスピード遅いから?
質を保ちながらスピードを上げる訓練法はありますか?


A:あるプロの先生とは残念ながら面識がないので、どのようにして描いらっしゃるのかわかりませんが、作風や連載スタイルの違いもありますので、単純に比較して悩まなくてもいいのではないでしょうか。月刊ペースで40ページ前後描ければ平均以上です。地道にひとつひとつの作業の錬度を上げていけばよいと思いますが、それでも飛躍的にスピードアップをはかりたいならば、作画の手順そのものを変えるという方法もあります。

 週刊誌の場合、1回当たり16ページから20ページ。これを、ネームを2日、ネーム直しを半日から1日、つまり下絵〜ペン入れ〜仕上げは並行作業で3日というのが基本です。もっとも、これはアシスタントが2人から4人いて、そのうち背景スタッフが2人くらいの体制でやっています。背景スタッフがいない場合、つまり背景もすべて自分で描くとなると、下絵から仕上げの作画作業に少なくとも倍の6日はかかると思われます。これでは週刊連載はできません。かといって、ネーム期間を短縮することはほぼ不可能です。では、どこで時間を稼げばよいかというと、「下絵の省略」というのがひとつの答えです。ネームから直接ペン入れに入る、という方を何人か知っています。もちろん、すべての下絵を省略するのではなく、トレスを必要とする背景は下絵を入れますし、部分部分に鉛筆で当たりをとっていくこともあるでしょう。

 上の方法は誰にでもできることではありませんし、下絵をまったく入れないというのは必ずしも奨励はしません。ただ、背景は数を描くことによってスピードアップをはかることができます。過去に類似のものを描いていれば、形やディテールや描き方を把握しているので、下絵の線の省略は誰にでも可能になります。また、キャラクターに関しては、とにかくデッサン力をつけることです。自分の作ったキャラクターならば、下絵がいらないくらい安定して描けるようになるのが理想です。

 また、背景のスピードアップについては、さまざまな省力化のテクニックもあります。背景バンク(背景ストック)や、スクリーントーンの削りによってそれらしい背景に見せる(ごまかしの)方法などです。最近はデジタル化も進んでいるので、3D画像による建物や車、小道具のバンクや写真加工といった方法をとっている方もいますが、一人でやっていると短期的には時間の短縮にはならないのが実情のようです。

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