【質問と解答】
Q:私は今天使に関する漫画を描こうとしています。そこで聞きたいことがあるのですが、最近は漫画でも色々と規制が強くなってきていると思うのですが、例えば人種差別的な表現や宗教的な事など様々な考えや思想が入り混じっている問題などを自分の漫画の題材として描いても平気なのでしょうか? どこまでは自分の意志で描いても良い・悪いの境界線がわかりません。
近頃新聞で学校の話を題材にした漫画家にそういう漫画を描かないでと警告を受けているという記事を見たのですが、漫画の業界の中では常にそういう問題が付きまとっているものなのでしょうか?
A:「表現の自由」とよく言いますが、自由には「責任」が伴います。作品中に人種差別的な表現を取り入れようとするならば、人種差別を助長する意図は論外として、表現力の不足によりそうとられることも許されません。また、そのような問題に対して、作品の中で真剣に取り組まなければなりませ ん。つまり、 誤解を生まない「表現力」と「覚悟」が必要です。新人にはかなりハードルが高いので、経験と実績を積んでから取り組むべきでしょう。
宗教に関してはさらに微妙で、悪意なき表現すら教義の禁忌に触れることもあります。イスラム教では、偶像崇拝が厳禁されており、神や天使の肖像を描くことも禁じられていますので、マンガで描いてもイスラム教徒から厳重な抗議を受けます。宗教を扱うならば、その宗教への知識と理解を深めなくてはならない、ということです。
ただ、キリスト教の天使に関しては、過去、多くのマンガ作品で取り扱っており、中には『デビルマン』『サイボーグ009天使編』『バスタード!!』のように主人公の敵として登場したりする場合もあったり、ゲームでモンスターと同列に扱われたりと、現実の宗教とは分けてフィクションの題材やキャラクターとなっていますので、あまり気にする必要はないと思います。この へんの扱いの是非の境界線は、業界や世間を見つつ判断するしかありません。
最近、マンガの規制が厳しくなってきた背景には、マンガの社会的な影響力が世間一般で認知されてきたことがあります。マンガの影響力の認知は、 一方では喜ぶべきことではありますが、それだけに作品作りの責任の自覚がより要求されるようになってきたのです。とにかく、迷ったら担当編集者に相談しましょう。個々のケースで判断してくれます。より具体的な作品内容 を問う質問でしたら、このコーナーでもお答えできますので、相談できる担当編集者がいらっしゃらないようでしたら、もう一度メールをください。
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