【質問と解答】

Q:唐突な質問ですが、なぜ漫画雑誌だけ読者層を年齢で細かく特定して (低学年は別)出版するのですかね? 映画でも(夏冬休みアニメは別)R指定以外 オールラウンドですよね! 宮崎駿氏のアニメだってだれが見てもおもしろいし、文学小説もしかり。広く大衆に受け入れられる事を自ら放棄してるような気がしますが。


A:漫画雑誌も、成年誌を除いてすべての雑誌を読者が自由に購入できるではありませんか? 対象読者(観客)を想定して作品作りをするのは、映画も小説も同じです。映画がオールラウンドと言いますが、何歳向けとあからさまにうたわないだけで、製作側はメインの対象観客の年齢、性別、嗜好を想定していますし、予告編やCMはそういうターゲット向けに作られています。小説の場合は、より顕著です。新刊の広告やオビには読者ターゲットを匂わせる惹句やジャンル分けを多く見ることができるはずです。ですが、著者(製作者)が想定していない読者(観客)層であっても、その小説を読みたければ自由に読むことができますし、その映画を観たければ自由に観ることができます。そうして、メインターゲットの周辺にゆるやかな自由度をもたせた市場を形成するわけです(この周辺市場も編集サイドや興行サイドは計算しているわけですが)。漫画も同じです。「広く大衆に受け入れられる事を自ら放棄してる」とは思いません。

 少年誌、ヤング誌、青年誌、少女誌、女性誌等の区分は、むしろ読者にとっては選択の指標になっています。これらの区分がなければ、かえって読者はどの雑誌を選んでよいか困惑するのではないでしょうか。また、ターゲットとする読者年齢を設定することによって、読者の知識や読解力、興味の対象に合わせた作品作りが可能になってきます。もちろん、小学生でも高い知識や読解力を持っていれば高い年齢向けの雑誌を手に取るでしょうし、50 代のサラリーマンでもファンタジーやラブコメが好きなら少年誌を手に取るわけです。そのような選択が可能なのは、雑誌の区分によって自分の求めるタイプの漫画がどの雑誌に載っているかという指標が示されているおかげでもあります。区分がまったくなければ、逆に読者に選択の余地がなくなりま す。読みたい漫画が2〜3本あっても、自分の理解できない漫画、興味のない漫画が7〜8割も占めている雑誌を誰が買うでしょうか。メインターゲットを設定することで、むしろ読者はその雑誌を手に取りやすくなるのです。また、性表現や暴力表現のレーティングの問題もあります。テーマのために性表現や暴力表現を必要とすることがありますが、そうした漫画は優れた作品であっても小学生に読ませるべきではありません。かと言って、低年齢の読者に合わせて表現を制限してしまえば、漫画の幅は狭まります。年齢区分を設けることで、漫画はその表現力と可能性を広げてきたと言えるかもしれません。


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