【質問と解答】
Q:アシスタント経験のある友人が時々手伝いに行っていたプロの作家から聞いた話が事実なのか、その作家の被害妄想なのか知りたくご質問させていただきたいと思います。
友人がそこへアシにいった時、聞いた話では「編集の好みに合わなければ、どんなネームも通らない」「編集が替わり、余計な手を加えなくなった途端、読者の好感を呼び連載をもてた。あの編集のせいで2年ムダにした」等ということでした。
ネーム等の可・不可はつねに1人の編集の判断にゆだねられるのでしょうか? また、担当が替わった途端売れ始めた等の経緯は編集部で把握されていて、新人育てに向いてる・向いてないなどの適材適所制度は編集部にあるのでしょうか? 入賞したあとの編集者運がわるいばかりに潰れていく可能性があるのかと思うと、少し怖いです。
A:確かに編集者にも腕の良し悪しはあります。未熟だったり頑迷だったりする編集者が担当について、作家の成長を妨げてしまうこともあると思いま す。また、作家と担当の相性の良し悪しもあります。「俺に任せればお前を売ってやる」的な、作家を自分の型にはめるタイプの編集者もいれば、作家の意向と個性を尊重するタイプの編集者もいます。一見後者の編集者がよさそうに思えるでしょうが、作家のタイプによってはかえってそれで伸び悩ん だり、個性はあっても売れない作家になってしまうことも往々にしてあります(それが不幸とも言えませんが)。どんな編集者も、すべてのタイプの作家に合うオールマイティな編集者ではありえないのかもしれません。ですから、どうしても合わないと感じたら、他誌に乗り換えることを考える前に担 当替えをお願いしてみてはいかがでしょうか。
質問の細目についてお答えしておきましょう。「ネーム等の可・不可はつねに1人の編集の判断にゆだねられるのでしょうか?」について。その編集部の規模と運営システムによって異なります。小さいところだと担当編集者のみの判断に委ねられますが、大きい編集部だと担当編集者に加え、デスク(副編や次長クラス)の判断や班会議での判断、そして最終的に掲載ネームを通す編集長の判断が入ってきます。特に編集長の意向は雑誌の方針であり、個々の編集者のネームや企画に大きく影響しています。特に作品のジャ ンルや題材について担当編集者が強く指導する時は、担当個人の好悪よりその時の雑誌の編集方針がからんでいる可能性があります。
「担当が替わった途端売れ始めた等の経緯は編集部で把握されていて、新人育てに向いてる・向いてないなどの適材適所制度は編集部にあるのでしょうか?」について。もちろん、編集長やデスクは把握しています。しかし、一度や二度、作家とうまくいかないからといって、新人育成からはずされることはまずありません。ただし、度重なると、漫画雑誌の編集者としての資質に問題ありとして、異動させられることはあると思います。
新人作家にとって担当との関係は、会社に就職して無能だったり相性が悪かったりする上司の下につかされるのと同じ問題が伴います。しかし、漫画家は編集部に就職したわけではなく、ビジネスパートナーの関係でもあります。合わない担当に対して泣き寝入りするだけではなく、自分の主張もして戦うことも必要です。そこで決裂してしまえば、そこまでの関係だったと、いっそあきらめがつくでしょう。しかし、作家と編集者は作品作りにおける同志でもありますから、互いの意見をぶつけ合った上で相互理解ができ、よきパートナーシップが築けるかもしれませんよ。
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