【質問と解答】

Q:少女漫画を描いているのですが、スポーツをテーマにしたものを描きたいと思っています。でも、そのスポーツのルールを知らない読者は面白くないと思ってしまうと思うのですが、どうでしょう? あと、スポーツものは描くのが難しいと聞きましたがどうなのでしょうか?

A:質問は2つなのですが、後者は前者に関連する質問なので、同時に回答します。
 少女漫画におけるスポーツ物を語る前に、少し少年漫画について触れさせ てください。少年漫画でスポーツ物を描く場合、メジャースポーツほど題材にしやすく、マイナースポーツほど題材にしにくいというのはわかりますね? メジャースポーツは、作品の中で説明するまでもなく 大多数の読者が既知の知識を前提としてストーリーを進められます。一 方、マイナースポーツを題材にする場合は、ほとんどの読者がルールを知りませんし、そのスポ ーツの楽しみ方から説かねばなりません。少女漫画についても同様のことが言えます。異なるのは、読者の少女たちに とってメジャースポーツというのが少年たちにとってのそれよりもはるかに少ないということです。少年漫画では、2大メジャースポーツの野球、サッカーに始まり、バスケット、陸上、各種格闘技など読者におなじみの題材に事欠きません。翻って、少女漫画ではテニス、バレー、新体操、フィギュアスケート、ゴルフなどメジャーと言えるスポーツは確かにあるのですが、どの種目にしても男子にとっての野球・サッカーほ どには抜きんでた興味は女子に持たれてはいません。従っ て、何の前提知識もなく楽しめる恋愛漫画よりも漫画としての難易度は自ずから高くなります。

 しかし、あなたがスポーツ物を描きたい、このスポーツを自分の漫画を通して楽しんでほしいと考えるならば、あきらめることはありません。難易度こそ高いですが、逆に考えれば競争相手が少ないジャンルとも言えるのです。読者に知識も興味もないならば、まずそのスポーツの楽しみ方を伝えるところから始めましょう。ルールを語るのは興味を持ってもらってからでかまわないのです。たとえば、アメリカンフットボール(以下アメフトに略) はアメリカでは野球以上にメジャースポーツですが、日本ではマイナースポーツであり、要素的には他のメジャースポーツに共通するところがあるにもかかわらずルールがよく知られていないために、楽しみ方がわかる人があまりいません。このアメフトを題材にした漫画に『アイシールド21』という作品があります。序盤で主人公がアメフトに出会い、興味を持っていく過程は参考になるのではないでしょうか。また、主人公を読者と同じ知識レベルに 置き、ドラマを先行させつつ、そのスポーツに徐々に興味を持っていくよう仕向けるという手法もあります。スポーツ物ではありませんが、『ヒカルの碁』などは読者の99パーセントが囲碁の知識も興味もなかったところからスタートした作品だけに、そのドラマ作りは大いに参考になるかと思います。


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