【質問と解答】
Q:先日持ち込みに行ったのですが、前作より評価はあがったものの、私の作品は「素直すぎて、まっとうすぎるから、尖ったものがない」というアドバイスを頂きました。過去の持ち込みから、賞をとるには1つでも尖ったものが必要だと学び、映画や漫画を観る度、読者が面白いと思う起爆スイッチを意識しながら観るように心がけてるのですが、それが自分の作品に生かせません。
新人には斬新さが必要だと思うので、尖ったものを描けるようになれば、新しさにも結びつき、読者をワクワクさせられる、と自分なりに日々考えて描いているのですが、どうしても王道というか、どこかで見た作品になってしまいます。個人的には、『ハンターハンター』の冨樫先生と、『ジョジョ』の荒木先生がものすごく尖ったものを持っていると思うので、何度も作品を熟読しているのですが、そのポイントを自分のものにできません。もちろん、プロの作家さんでさえ、それが簡単に出来たら苦労しない、と思われるような質問だとは思うのですが、尖ったものを描くための、何かアドバイスをいただけたら、お願いします。
A:「王道」ストーリーというのは、万人が快感を覚える方法論に則っているからこそ「王道」なのです。ヒット作というのはむしろ、王道を行く作品から生まれます。冨樫先生の『HUNTER×HUNTER』にしても荒木先生の『ジョジョの奇妙な冒険』にしてもストーリーは王道と言えます。「素直すぎる」「まっとうすぎる」と評されるあなたの作品との違いは、ストーリー構成ではなく、キャラクター作りや演出や世界観といった味付けにあり、そこが「尖った」ところなのです。創作のコツは「予想を裏切り、期待に応える」ことだと言われます。読者の期待に応えるというのは、プロの創作においてもっとも意識しなければならないことです。しかし、それだけでは「先が読める」「当たり前の展開」という感想になってしまいます。「王道」というのは、快感則に則ったものだけにパターン化されていますので、読者が先読みしやすいのです。そこで、最終的に読者の期待には応えるのだけれども、その過程において読者の予想を超えた展開、先の予想することすら忘れる展開を用意する必要があります。そのための道具立てが、意外性のあるキャラクターや世界観における独自のルール作り、先を読ませないための演出力(コマ割りやエピソードの作り方も含めたもの)なのです。それらの道具立てにその作家ならではの「こだわり」が見て取れたときに、人は「尖っている」と感じるのです。
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