【質問と解答】

Q:現在私は無職です。実は高校時代3度投稿し3度とも小さな賞をいただく事が出来ました。しかし担当者がつく事はありませんでした。しかし程なくして、他社に送ったイラストがキッカケで投稿やデビューというプロセスを踏まず4コマ漫画の連載やアシスタントのお仕事をいただき10年近く活動をしておりました。ところが雑誌の廃刊や個人の発病等が理由で、ここ10年近く漫画から離れておりました。ようやく今年から再チャレンジを始めましたが、話作りからコマ割やセリフ、背景等のテクニック的な事、絵柄に至るまで各出版社編集者の方々に駄目だしの批評をいただききました。10年のブランクの大きさを感じると共にいただいた言葉は納得し大変勉強になったと思いました。しかし同時に、昔身に付けた技術は無駄だったのか? 時代によって読者も編集者も書き手に求められる物も変わって行くのは必然なのでしょうが、私自身がデビューのプロセスを踏まずにプロを経験してしまった事が間違いだったのでは?と疑問に思えて仕方ありません。それでも漫画以外の仕事が考えられず頑張っております。一度つぶれてしまった作家でもやっていける環境は、現在の漫画界にはあるんでしょうか?

A:難しい問題ですね。年齢が書いてありませんが、10年近く漫画家としての活動をした後、10年のブランクということですから、おそらく現在40歳前後だと推察します。10年の間、商業活動以外の漫画活動もしていなかったとすると、絵柄や演出スタイル、感性の面で今の読者の嗜好についていけなかったりします。このあたりのところは、青年誌や女性誌ほど影響が少なく、少年誌、少女誌、ヤング誌、ファンタジー誌ほど影響が大きくなります。
 私の経験談ですが、ヤング誌で担当していた新人が大学を卒業して就職のため3年ほどのブランクの後に久しぶりに作品を描いたので見て欲しいと送ってきたものの、技術力はともかく絵柄や感性が枯れてしまっておりがっかりしことがありました。再起の可能性がないとは言えませんが、そのために費やす努力と時間と現在就いている仕事を考えてもらったところ、その方はプロへの再チャレンジを断念しました。一方で、あなたと同じく10年近くのブランクを経て40を過ぎて漫画家に再度チャレンジしてきた女性(彼女の場合は家庭の事情でした)もいましたが、まったく古さを感じない絵柄でした。聞いてみると、案の定、商業誌でこそブランクはあったものの、時折同人活動やアシスタントをして何らかの執筆活動は続けていたそうです。彼女は他誌にも持ち込んでいたようで残念ながら連絡が途絶えましたが、企画さえツボにはまれば再デビューしてもおかしくないと感じていました。
 以上のように人それぞれなので、実際に今の作品を見てみないと答えにくいですが、一般論として話すとかなり厳しいです。10代、20代のうちならともかく、30を超えるとかなり絵柄や作風が固まり、成長のカーブも緩やかになるので、年齢相応の力量と結果が望まれます。40代だとその雑誌のレギュラー連載が即獲れるクラスでないと、まず相手にしてもらえません。同じレベルの作品を描く20歳の方と40歳の方がいれば、20歳の方のほうに指導の時間を割きます。ですから、レギュラー連載クオリティの作品を描きあげて持ち込まない限り、通常の持ち込みや投稿では再デビューは困難です。あるいは、同人誌かWEBコミックで自力で万単位のファンを獲得すれは編集者のほうから頭を下げて仕事を依頼しに来るでしょう。


その他のご質問は、フォームからお願いします。