【質問と解答】

Q:1)背景資料集をトレースするにあたり、人物を例えばファミレスのソファーに座らせるなら、先に背景資料の中で採用写真をコレと決めて下絵時点でカッチリとトレースするのでしょうか? 人気作家さんはアシスタントの方と完全分業の場合が多いと思われますが、どのようにうまくハマるものか…と。自分は各工程毎に通しでやるタイプなので、その場合のプロの先生とアシスタントさんの合わせ技というか、気になります。

 2)背景は正直苦手なのですが、パースや細部がやや(?)おかしくても、小物ならなんであるかがわかればいいやとか、パースが多少狂っていても、大丈夫!どこにいるのかが分かればーなんて自分に甘々なんですが、これも意識改革したいです。私のような考えの方にかつて出会われた事は当然あると思うのですが、ある人はこんなアドバイス(もしくは苦言)によりそれ以前に較べ段違いに良くなった!って一言二言、響く言葉をお願いします。2)は質問ではありませんね、すみません。

A:1)アシスタントとの分業作業では、背景をアシスタントに全面的に任せるカットでは、下絵にかかる前に背景用の写真をきめて、背景と人物のアタリをとっておくのが普通です。この場合、資料写真のほうに人物を合わせるやり方になります。また、アシスタントの技量が高ければ、先生の描いた人物(もしくはそのラフ)に合わせて、トレースに頼らずパースをとって背景を入れていきます。この場合、資料写真はあくまで参考にするだけです。1枚の資料写真から角度を変えて背景を起こしていく技量が必要となります。
 アシスタントを使っての作業は、実際のプロの現場で学ぶのが一番です。プロを目指すなら一度はアシスタントを経験しておくことをお勧めします。

 2)意識改革したいと言いながら、他者にそれを頼るのは間違いです。漫画家になるのは義務でも何でもありませんし、まして誰かがあなたに懇願したり強要したりするものでもありません。あなた自身がやる気にならなければ編集者も手を差し伸べたりはしません。
 背景や小物をなぜおざなりにしてはいけないのかといえば、それらは読者に対して「説得力」を持たせるための要素だからです。大劇場の大道具小道具や衣装が小学校の学芸会のそれレベルではいかに名優が演じようと白けてしまいます。もちろん、街角のパントマイムに足を止める人がいるように、キャラさえしっかり描けていれば目を留めてくれる人もいますし、そういう市場もあります。ただ、不特定多数の読者を対象としなければならない商業誌であれば、キャラの演技やあるいは作品世界そのものに説得力を持たせる画力が必要となりますし、商業誌を購入する読者はそれだけのクオリティを期待します。ですから、そのための努力を惜しむ人は商業漫画家を目指すべきではありません。


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