【質問と解答】

Q:2009年8月3日の質問と回答を読ませて頂きました。私は、来年度から会社に就職する者です。回答にあった「経済的事情」に入ります。実は学校を卒業してからフリーター生活を続けてきて、その間に漫画を投稿していたのですが、決していい結果が出ることはなく、経済面でキツい生活になってきて、泣く泣く就職しました。でも、漫画家の夢は捨てることができず、いつも心がモヤモヤしています。就職していても漫画を描き続けたいと思います。就職しながら連載を持っている漫画家の方っていらっしゃるのでしょうか? やはり連載を持ったら会社を辞めていらっしゃるのでしょうか? 変な話ですが、もし連載が持てたとしても打ち切りになったりする可能性もあると思うんです、そうしたらまた生活がキツくなり、元に戻ってしまうと思います。連載を持っても、本当に売れない限り食べてはいけないと思うんです。この厳しい業界で生き残れる覚悟がない、生活は確保したい、という人は趣味で漫画を描き続けるべきなのでしょうか。正直、「現実」というものにぶつかっています。「夢」だけでは決して生きていけないんだな、と。

A:連載漫画家でも会社勤めをしている方はいます。大抵は4コマやショートで、連載1本だけでは生活していけないからです。また、連載が打ち切られた場合、新連載を起こすには1年2年かかりますから、貯金がなければその間はアシスタントなどをして生活することになります。ただ、自分一人ならばアシスタントでなんとかやっていけても、結婚したり子供ができたりすると定収入が必要になってきます。漫画を描けるという特殊技能を持っているので、一人ならば夢を食べて生きていくこともできるでしょうが、扶養家族ができれば否が応でも現実に直面しなければなりません。
 漫画家だけではなく、音楽、演劇、絵画、ボクシングなど、就職して働きながらそれぞれの分野で成功を夢見て頑張っている方はたくさんいます。その多くは「現実」の生活の中で年をとって、やがて「夢」をあきらめていくのでしょう。生き残るのは、「夢」の分野は狭き門で、それで食べていけるのは運と才能に恵まれたごく一握りの人か、他のものをすべて捨てて「夢」のために生きることを選んだ人だけです。私も、才能がありながらも、生活のために開花を待てず就職してペンを折った新人をたくさん見てきました。だから、漫画家を夢見るのなら、生活の心配をしなくていい年齢のうちにできる限り頑張ってほしいですね。あなたの場合、扶養家族がいなくて、趣味で描き続けられる余裕があるのでしたら、まだプロになるチャンスはあります。就職すれば、当初は慣れない仕事と人間関係に疲労とストレスを蓄積させられるでしょうが、慣れてきて仕事のコツとペースがつかめてくれば、いずれ余暇を楽しむ余裕も出てきます。その時、漫画に対する情熱を持ち続けていられれば、楽しんで描くことができるでしょう。そうした中でプロを目指してほしいと思います。


その他のご質問は、フォームからお願いします。