【質問と解答】

Q:いい話はいらないとはどういうことでしょうか。マンガの壁の14話 で、「いい話はいらない」と担当の台詞があるのですが、 これを読んで、私も以前同じ事を言われたことを思い出しました。これは、ど ういう意味なのか詳しく教えてください


A:まず、担当さんから言われたことがわからなかったり納得できなかったら、その場で聞き直し、納得できるまで話し合ってください。批評やアドバイスをただ聞き流しているだけでは成長は望めません。
 さて、作中の編集者の台詞では前後の文脈が不明なのですが、「いい話」自体を否定するわけではないでしょう。ただ、投稿者や新人にありがちな「いい話」は、作者の「これっていい話でしょ」「感動できるでしょ」「ほんわかした気持ちになれるよね」という意図が透けて見えていてしらけるわけです。これは、ストーリーの骨子だけにしか目が行っておらず、「いい話」という自己満足に陥って、キャラクターの掘り下げ、演出、エピソードがおざなりになり、作中のキャラクターへの共感と感動に至る説得力が欠けているためです。基本的に「いい話」というのは、善意の人々による善意の行動がハッピーな結末に至る話が多いのですが、よく引用されるトルストイの『アンナ・カレーニナ』の中の一文「幸福な家庭は皆一様に似通っているが、不幸な家庭はいずれも不幸の様相を異にする」をご存じでしょうか。私的な解釈になりますが、このロシアの文豪は、幸福な人々を描くだけでは読者を堪能させられる深いドラマを構築しにくいと言っているのでしょう。いい人達の「いい話」も、「幸福な家庭」と同じで、キャラクター描写が平板になったり、話の先読みをしやすい通り一遍のドラマになりがちです。力のある人が描けば「いい話」は感動やほんわかした後味を残してくれますが、それに見合った力がない新人相手には自己満足的な「いい話」は封印して、より難易度の低いストーリーでキャラクター描写と演出を磨いてほしいということです。

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