【質問と解答】

Q:少年誌への投稿を考えている者です。初作品のネームが完成し、これから本格的なペン入れの練習と実践に移ろうという段階だったのですが、先日、あるヒット漫画を初めて読んだ際、致命的かもしれない問題に気付いてしまいました。
 投稿用に用意していた完成ネームに登場する重要キャラクターの設定が、ある既存の漫画に登場するキャラクターのものと大きく被ってしまったのです。その漫画はジャンルや世界観など、自分が将来的に描きたいテーマと重なっている部分が多く、いずれチェックしたいとは思っていたのですが、掲載雑誌が志望する雑誌と違う上に既刊のものを全て揃える金銭的余裕もあまりなく、これまで避けていたものでした。これまでも構想中のキャラクターの容姿や戦闘法などがどこかで見たことのあるようなものになっているのではと思うことは度々あり、その都度記憶を手繰っては確認や修正を重ねてきたのですが、今回被りの見つかったキャラクターに関しては、外見の印象に留まらず、 その被りがキャラクター設定の根本にまで及んでいるという酷い有様です。
 まず酷似個所は恰幅や肌の色など外見的な類似に始まり、『ある特定の能力を持った人間に敵意を向けざるを得ない動機(恨みの理由)』のような環境、人格 設定、終いには少し変わった一人称を使わせる予定だったのですが、その使用漢字に至るまでそっくりそのまま同じだったという始末‥‥。もはや辛うじて違うと言えるのはその顔立ち、ヒゲのある無しくらいです。 これではどう贔屓目に見てもその既存漫画の影響をモロに受けてる としか思えないのですが、本当にその漫画をチェックしてみるまで、自分はそのキャラクターの存在さえ知らなかったんです。
 …ですが読み手には作り手がこれまで見てきたものを確認する術などありません。「知らなかった」なんて言い訳はまず通じないと思います。こうなってしまった以上、もうこの漫画の設定自体を一から練り直すしかないと考えているのですが、今まで払ってきた労力に対する虚しさや、今後もまたこんな被りが起きて全てひっくり返ってしまうのではないかという恐怖感から、最近では漫画を描く、物語を創るという衝動そのものがほとんど湧かなくなってしまいました。オリジナリティに拘って漫画をつくる場合、こうした悩みは常に付き纏うものだと思いますが、周囲に相談するにしても、漫画について話せる人が一人もおらず、悩んでます。どう乗り越えればいいのでしょうか。



A:あなたの取るべき行動は2通りです。
 一つはそのネームのまま原稿を描き上げて投稿することです。設定の模倣の疑いは持たれるでしょうが、あなたにやましいところがなければ投稿してもいいでしょう。キャラ設定が既成作品と被っていても、ストーリーやドラマはあなたのオリジナルのものでしょう?
上がった作品はあなたが思うほど類似を感じさせないかもしれませんし、模倣を疑われて上位入賞は無理でも、他に目にとまるところがあれば次につながる可能性もあります。
 もうひとつはこのネームを忘れて新しいネームに向けて頭を切り換えることです。これまで払ってきた労力が無駄になったことを考えるとやる気が起きないということなら、あなたの漫画家になりたいという夢はそこまでのものだったということです。
初作品の、しかもネーム段階ですよね? デビューまでに10作品、20作品の完成原稿が何の賞にも引っかからず落選することも珍しくないのがこの世界です。デビューして連載を持っても、1回の作品を上げるのにその何倍もの没ネームの山を築き、やっとネームが上がったら担当との打ち合わせで全没になって一から新ネームを起こすこともよくあります。初作品のネームを1本やり直すからといってやる気を失うようでは到底プロにはなれません。
漫画家になるための一番の条件は、決して諦めないことなのです。そして、結果的に没になったとしても、設定を創りプロットを構成しネームを切った経験は決して無駄にはなっていません。あなたの漫画力を大きく引き上げているはずで、それは今後の作品作りに生かされてきます。願わくば、今回の悔しさをバネにして再チャレンジし、今回のネームよりももっと面白い作品を目指してください。

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