【質問と解答】
Q:私は昔から、外出するよりもほとんど家にこもりっきりで絵を描いたり話を考えたり、本を読んだり、たまに出かけるとしても美術館や映画、大衆演劇などとかで、本当にインドア人間です。漫画を描くことが小学生から大好きだったので高校を卒業して数年、デビューをすることができましたが、ふと周りの友人に心配されます。「おまえ、そんなひきこもってばっかじゃ漫画家として成功しないんじゃね?」とか、「ひきこもりじゃあ面白い、空気を感じさせるようなすげー漫画なんて描けねえだろー」と心配されます。そ‥その通りなのでは、とちょっとものすごく心配になってきました。やはり、人生経験を色々積んだ作家のほうが成長するスピードが速かったり、描ける世界観が大きく深いものになるのでしょうか?
A:自分自身の職業体験や交遊体験、恋愛遍歴などは確かに創作の糧になりますが、外向的でアウトドア派であれば人生経験が積めて人間として深みが出るかというと必ずしもそうではありません。そういう体験を内省・考察することで初めてその経験が生きてきます。外向的であっても交遊は上っ面だけで、どんな経験をしても糧になっていない空っぽなアウトドア派も世の中には大勢います。むしろ、漫画家や小説家タイプのクリエイターには交遊が苦手で内向的なインドア派のほうが大多数でしょう。実際の体験や交遊があるにこしたことはありませんが、そればかりが「経験」ではありません。あなたの場合、本を読んだり美術館に行ったり映画や演劇を観に行ったりと、多趣味によって十分「経験」を補っています。それにあなたのことを案じてくれるような友人も周りにいるようですし、まったく心配する必要はないと思いますよ。世の中には、1か月間家族と担当編集者としか口をきいたことがない、外に出るのは近所のコンビニに買い物に行くときだけという作家も結構いるのですから。
まあ、こうして思うところがあったのなら、出不精を少しだけ改めて、たまには取材のつもりで友人と遊びに行ったり旅行に行ったりするのもいいのではないでしょうか。性格や生き方そのものを変える必要はありませんが、「百聞は一見にしかず」というのもまた真実で、書物や観劇の遍歴を積んだ人間ほど「自分だけの体験」は価値がありますから。
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