【質問と解答】
Q:今年デビューしたばかりの新人です。今年28歳です。今年に入って3作掲載されました。
地方で漫画を描いているのですが、打ち合わせは電話でしかしたことがありませんし、ネームのFAXを送っても送信エラーで途中までしか送れていなかったりします。周りに漫画を描いてる人もいないし、アシスタントの募集もほとんどありません。地方だと不利だな、と思う事が多々あります。なので、東京近辺に引っ越そうと思いましたが、「漫画はここでも描ける、今までだって描いてきた」という思いから、迷っています。東京に行って、高い家賃や生活費のため、アシスタントやバイトをして漫画を描けていない友達がいます。自分もそうなってしまいそうで、今の生活に甘んじています。
東京に住んだからと言って、担当編集者さんが新人の為に毎回会って打ち合わせなどしていただけるものなのでしょうか? 東京に住む最大のメリットとは何でしょうか?
あと、人によるとは思いますが、「東京に住んでいる新人の方が情がわきやすい」と編集者さんに言われた友達がいるのですが、やはりそういう考えの編集者さんは多いのでしょうか? 個人的にはどう思われますか?
A:質問文を読む限り、あなたはすでに上京して一人暮らしすることのメリットとデメリットをよく理解している方なのでしょう。それでもあえて述べると、東京近辺在住の大きなメリットは、一にアシスタント先が多いこと、二に担当編集者と直接会って打ち合わせられることに尽きます。作画技術の向上やスタジオ運営のノウハウを肌で学ぶにはやはりプロの現場でのアシスタントが一番です。ただ、独学でも作画技術が十分高い方は、それほど現場で学ぶ必要性を感じないかもしれません。特に、地方から出てきて家賃や生活費を稼ぐ必要がある方は、そのための時間・労力とメリットとを天秤にかけて考えるのが当然でしょう。自分が技術向上のためにアシスタントをしたほうがいいかどうかは、担当さんと相談してください。
打ち合わせについては、大抵の場合は電話とFAX(もしくはメール)で十分ですが、確かに電話だけだと互いの意思疎通が不十分だったりすることもありますので、たまには直接会って打ち合わせすることが望ましいです。なお、東京近辺在住の方でも毎回会って打ち合わせするわけではありませんし、その必要もないと思います。ネームの微修正ごとにいちいちスケジュールを合わせるのは互いの時間の無駄ですから。
東京在住の新人のほうが情が湧きやすいかという点については、東京に住んでいるかどうかというよりも直接顔を合わせているかどうかでしょうね。編集者も人間ですから、電話のやりとりだけで顔も知らない人間よりも直接会ったことがある人間に親しみを持つのは当然です。ただし、それで作品評価に差が出るわけではありませんので、そのために東京に引っ越す必要はありません。可能ならば、先の打ち合わせの件も含めて、年に1〜2度上京して編集部に顔を出すというのはいかがでしょうか。実際そうしている作家さんや新人も大勢います。上京費用はかかりますが東京で一人暮らしをするよりはずっと安くすみますし、都内で資料を探したり取材撮影をしたりすれば一石二鳥です。連載が見えてくれば、編集部が上京費用も負担してくれる場合もあります。
結論として、東京近辺に住むことの最も大きなメリットはアシスタント先の多さということですが、雇う側にとっても同じ事が言えます。あなたがこの先連載を持つようになれば、アシスタントを雇う立場になるわけですが、地方だと募集してもなかなか応募がありません。つまり、アシスタントを雇わなくても一人で描ける方や、デジタル環境で作画している方、すでにアシスタントのあてがある方(友人や専門学校の後輩など)以外は、連載を持てば必然的に東京近辺に居を構えるしかないということです。編集者と交流を深めたり、同業の知己を増やしたりするのはそれからでも十分です。ですから、早急にアシスタント先を探す必要性さえなければ、上京を急がなくてもいいと思いますよ。この先は担当さんとよく話し合って結論を出してください。
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