【質問と解答】
Q:現在22歳の、契約社員として働きながら漫画を描いてる男です。持ち込み回数は5回を数えます。実は、5回目の持ち込み後からスランプ状態に陥ってしまい、約1年半苦しみ続けました。もう自分はこのまま漫画を描くことは出来ないんだと、マンガの事や自分自身の事で追い詰められ、死(自殺)をも考えた程でした。ですが、お寺で供養してもらった事がきっかけで、約2年目にしてついに1作完成する事が出来ました。内容は自分の辛かった人生を主人公に重ねて、『生きる事』をテーマにした、森で繰り広げられる少年と(幽霊の)少女の感動物語という感じです。
今回、雑誌の漫画賞ではありませんが、ある有名な漫画賞に初投稿しました。自分ではストーリーに関しては自信はあるのですが、救いはあるものの重いテーマを扱っていることが気にかかっています。こういうマンガは審査員に受け入れられにくいものがあるでしょうか? また、今回の投稿作の原稿コピーを後で見て、作画の面で矛盾点が生じてしまっている事に気が付きました。すでに作品投稿後何日もしてからです。例を挙げると、主人公がそのシーンでは服やアイテムを持っていないはずなのに身につけいたりとか、キャラクターの体の傷や血を描き忘れていたりという点です。ストーリーがある程度しっかりしていても、こういった点はやはり減点対象になってしまうのでしょうか? この時点でもう入選は諦めた方がいいのでしょうか? 命をかけて死ぬ気で描いた作品なので結果をどうしても残したいです。
A:雑誌の漫画賞なら、雑誌の傾向とかけ離れすぎたテーマの作品は受賞しづらいということは確かにあります。しかし、大抵の雑誌の新人賞ではテーマの重い軽いで賞が決まったりはしませんし、出版社以外の民間団体、公共団体主催の漫画賞ならなおさらテーマ性・作品性の高い作品のほうが評価されると思われますので、その点では心配ないでしょう。
投稿作の作画ミスについてですが、大幅な減点になるかどうかは審査員次第です。雑誌の新人賞だと作品自体の評価だけでなく作家としての将来性を加味して見ますから、初投稿作と言うこともあり大きな減点にはなりません。プロであれば見逃せないミスですが、初投稿の素人投稿者ということで、ミスよりも長所のほうを見てくれるでしょう。しかし、出版社以外の団体主催の漫画賞だと作品のみが評価対象になり、初投稿かどうかも考慮されないでしょうから、減点幅が大きくなるかもしれません。このあたりは審査員個人の審査基準によって採点が変わってきますので、何とも言えません。ただ、ストーリーに影響を及ぼす矛盾でないなら、同ランクの候補作と競り合った時に甲乙が出る程度の減点ですむのではないでしょうか。
以上、質問についてはお答えしましたが、最後に言っておきます。命をかけて死ぬ思いで描いた作品なので結果をどうしても出したい、というのは何もあなただけに限ったことではありません。あなたと同じような思いをしながら描いて、それでも何の賞にも引っかからず落選して、また命を削る思いをして描いてまた落選して、を何度も繰り返している方も全国に大勢いるのです。応募した漫画賞にもそうした方達が何人も投稿しているはずです。あなただけが特別なのではありません。あなたを含めたみんながみんな、作品に対する想いを抱いているのです。しかし、受賞枠に限りがある以上、どんなに優れた作品であろうと、それよりも優れている作品が現れれば下位に立たされることになります。また、血涙を流しながら2年かけて描いた作品よりも、気まぐれで2週間で描いた作品のほうが面白ければ、そちらが受賞するのが非情な現実です。漫画賞の投稿作に与えられる評価は相対的なものであり、過程でなく結果に与えられるものだということを心に留めておいてください。
そして、結果には過剰な期待を抱きすぎないことです。正直、あなたが入選できる確率は微妙なところだと思います。まず、初投稿で入選する例は少ないことがあります。初投稿ということは漫画創作の経験が少ないということでもありますから、当然ですね。そして、作画ミス自体はささいなことではありますが、推敲がちゃんとできていないということでもあります。下絵段階、ペン入れ段階、仕上げ段階、原稿が完成した後──ミスに気づく機会は何度もあったはずです。プロの漫画家のように何人もアシスタントを使ってあちこちの机にページが散っていて並行作業をするのと違って、一人で原稿を描いているのですから、普通に注意していればそんなにミスが多発するということはないはずです。こうなってくるとネームにおいても推敲不足の可能性が危惧されます。自分で気づいていないものの、ストーリーの矛盾や構成の甘さがあるかもしれません。
そう考えると、奨励賞くらいに引っかかればラッキーくらいに思っているのが無難です。それで、結果的に上位の賞が受賞できれば素直に喜べばいいですしね。いずれにせよ、作品を投稿した時点で一区切りつけて気持ちを切り替え、結果が出るのを待たず次の作品に取り組みましょう。初めて1作描き上げたことで、作画ミスの件も含めていろいろと見えてきたものも多いと思います。それらを次の作品に生かすようにしていけば、さらにいい作品が描けるようになることでしょう。
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