【質問と解答】

Q:最近、担当を変えられました。その結果、連載が終わりました。連載が終わることは自分にも非があったとは思いますが、担当との意見が合わず、担当の考えに流されるままに漫画を制作したことが原因だと思ってます。  漫画家は編集者と平等であるべきだと思います。しかし、実際は実力のない新人漫画家は編集者の言いなりになるしかない状態だと思います。漫画家がいなければ、雑誌はなりたちません。編集者がいなければ、雑誌はなりたちません。新人漫画家は編集者の言いなりになるべきなのでしょうか??
 前担当さんが最後に「次の担当には気をつけろ」と言っていたのが意味深で仕方ありませんでした。




A:漫画家と編集者の関係に、一概にこれが正しい在り方だというものはありません。キャリアや資質、性格が違えば、関係のありようもまた変わってくるのは当然です。何時間、何日間も顔を突き合わせてノリを合わせてネームを作り上げていく関係もあれば、つかみ合い寸前の喧嘩腰の激論をぶつけ合いながら研ぎ澄ませるようにネームを仕上げる関係もあります。実績を重ねた大御所作家さんの中には、俺のネームには一切口を出すな的タイプもいますが、結果さえ出せば編集者も文句はありません。その場合、編集者は何もしないわけではなく、作家が描きやすい環境を整えたり作家のモチベーションを高く保つのが仕事になります。
 そして大抵の新人作家の場合は、作家側の創作ノウハウが不足もしくは未熟なため、編集者主導の創作態勢になるのは必然です。ただし、これは担当の言いなりになるということではありません。編集者も作家の個性を引き出したい、伸ばしたい、そして漫画家として成長させたいと考えているのです(中には作家を絵描きマシンとしてしか見なしていない編集者もいますが)。だからこそ、作品内容の指導をしたりネーム修正の指示を出したりするわけですが、コミュニケーション不足で指示の意図を理解できないまま不満を抱きつつ描いたところで魅力的な作品にはなりませんし、漫画家としても成長しません。
 ですから、担当と意見が合わないとき、言われるままに従うのではなく、納得がいくまで担当の意図を問い、耳を傾けるべきです。作家を納得させるのは編集者側の責任だとは思いますが、作家が黙り込んでしまえば理解してもらえたのだと思いこんでしまいますから。そして、それでも担当の意見が間違っていると思う時や自分の目指したい方向性と異なる時には、担当を納得させられるだけの理由を用意してください。担当もあなたの意図を理解し、納得がいけば、きっとそれをくみ取ってくれます。面白い作品を作りたい、読者を楽しませる作品を送り出してヒットさせたいという思いは共通しているのですから。「なんで自分の思い通りに描かせてくれないんだ」で思考停止するのではなく、「なんで」という理由部分を突き詰めましょう。作家の最大の理解者である担当に伝わらないネームを、読者が面白がるわけがありません。そこで、伝えるための創意工夫をすることで成長するのです。担当の意見は経験やデータ、それと過去に接した作家のノウハウに基づいたものです。ですから、自分の意見を否定するものとして敵視するのではなく、利用するつもりで貪欲に吸収し、咀嚼した上で自分の個性のフィルターを通して作品に生かしてやる──そういうスタンスで臨むといいでしょう。
 最後に。文面からは意見が合わなかったのが前の担当さんなのか新しい担当さんなのか不明なのですが、新しい担当さんが上に述べたような話し合いを面倒がったり、あなたの話にまったく聞く耳持たず自分の言うとおりにやっていればいいんだ的なタイプであったりしたならば、問題です。その場合は早めに担当替えを申し出たほうがよさそうです。表面的には相手を立てつつメンタルは保って上手に付き合える作家さんもいますが、文面からしてあなたには難しいでしょうから。前の担当さんが協力してくれるようなら編集長に口添えしてもらうといいでしょう。

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