【質問と解答】
Q:私は漫画家になると言っておきながら、ダラダラと現在まで生きてきました。大学在学中に持ち込みをしようと考えてきましたが、持ち込みに至るまでのアクションを一切起こさずに大学を卒業してしまいました。なぜ自分自身と向き合わなかったのかと、今でも情けなくて腹が立ちます。実は少しずつ、思いついた人物やストーリーのアイデアを書いたり、加筆したりとノートに書き記してはいます。しかし、私のアイデアは果たして受け入れられるのだろうか、古いんじゃないかな‥‥と気後れしてしまうのです。今までは、持ち込みの為の作品は、思いついたものとは別に描こうと思っていましたが、他のアイデアが思い浮かばないので、今まで書きとめて温めてきた作品にしようかと思っています。でもその分、アイデアという引き出しが減ってしまいますし、どうすればいいでしょうか。
A:いつか自分が力を付けてから描こう、いつかプロになって連載の話が来たときのためにとっておこうと、アイデアの出し惜しみをしていては「いつか」などという日は永遠に来ませんよ。
これから投稿を始めようという人間が、アイデアの出し惜しみをしながらデビューできるほどプロの世界は甘くはありません。今の「引き出し」の中身を使い切り、自分の力すべてを出し切って臨まなければ、編集部もあなたの力を量ることはできません。アイドルを目指す人間が自分の魅力を隠してオーディションに臨みますか? プロのスポーツ選手を目指す人間が力をセーブしてプロテストに臨みますか? 全力を出し切らなければ、後で「あのアイデアを使っていれば、賞が獲れたかも」といつまでも悔やむことになります。全力を尽くして落選したのなら、やらなかったことへ責任を転嫁することなく、結果を受け入れることができるでしょう。そして、そのことが次のステップへもつながります。それに、作品を1本も描かないうちからアイデアの枯渇を心配しているようなら、到底プロの漫画家にはなれません。「引き出し」は空になれば補充するものです。そして、それができない者は漫画を職業にするための力が欠けていると考えてください。
今はあれこれ思い悩むより、自分のアイデアを「作品」という形にすることです。クリエイターを目指す人間にとって、1本の作品を完成させられるかどうかが最初の壁となります。漫画家を夢見る人たちの多くが、ノート何冊分ものアイデア帳や分厚い設定書を書きながら、結局最初の作品を描ききることなく何年も足踏みした挙げ句に年齢を理由に夢を諦めていきます。あなたも、アイデアの評価や先のことを心配して描くことを逡巡していると、大学時代と同じ事を繰り返してしまいますよ。最初の1本は今の自分を出し切って思うままに描いて持ち込み、次作から評価や批評を反映していけばいいのです。
漫画家の夢があなたにとって単なる夢想でしかないのか、それとも形ある目標となるのか──それが、最初の作品を描き上げられるかどうかに問われています。
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