【質問と解答】
Q:常々疑問に思っていた事をお聞きします。悲しい話を描いている時、プロの方々はどうやって涙をこらえているのでしょうか? 漫画を描いている時の事なのですが、登場人物の子が辛かったり悲しい思いをする時、毎回涙が溢れてしまい、酷い時は悲しくて手が震えてしまいます。原稿に落ちないよう四苦八苦しながら描いているのですが、そういった時のアドバイスを教えてください。プロの方は思いっきり泣いて泣いてすっきりしてから、原稿に挑むのでしょうか?
また、ネームの時の話なのですが、字コンテからネームをおこす時、頭の中でどんどん話が進んでしまって、今自分が描いているページにキャラを留めておくのに毎回必死になっています。すいすい描けるといいのですが、毎回四苦八苦しながらネームを切っているので、脳内でキャラが先に先に行ってしまわないように苦労しています。これも何か留めておくコツのようなものがありましたら、是非教えてください。
A:自分の描いているキャラクターに感情移入できるというのは、創作者としてひとつの才能です。むしろ、そういう気持ちを大切にしたほうがいいでしょう。ネーム(絵コンテ)に起こす前に字コンテを書いているとのことですから、感情移入しすぎるあまりストーリーが大筋を外れていくことはないでしょうしね。私が以前担当していた漫画家さん──当時からかなり売れていた大先生なのですが──その方も、レギュラーキャラが死ぬシーンのネームを泣きながら切っていたというのを本人から聞いたことがあります。ですから、無理に感情をコントロールする必要はないと思います。「話が頭の中で進む速度にネームが追いつかない」という2番目の質問への回答にもなりますが、ネームを最初から最終形に持っていくのではなく、一度目は勢いに任せてラフネームを切ってはいかがでしょうか。シーンの絵は頭の中にとどめるだけにしておき、おおざっぱなコマ割りと台詞の断片だけでキャラクターへの感情と頭の中のストーリー展開を一度吐き出してしまうのです。その上で二度目のネームを切ればキャラクターも客観的に見られるようになるでしょうし、絵や台詞もじっくりと考えながら入れられるでしょう。つまりネームの初稿はおおまかな輪郭を整えるだけで、2稿目で描き込みと修正を行うというわけです。このやり方で大事なのは、初稿ネームを切った時のイメージが薄れないうちに2稿目にとりかかることです。一度この方法を試してみてはいかがでしょうか。
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