【質問と解答】
Q:ノドについての質問です。タチキリいっぱいの大きなコマ(例えば、原稿用紙上半分を使った大きな一コマ)を描く際に、ノドいっぱいまで描いてはいけないのでしょうか?(見て欲しい部分の絵柄や台詞は基準枠内に描いてあります)
プロの方の漫画を読むと、タチキリで大きなコマであってもノド部分までは描いていない場合と、ノドいっぱいまで描いているものと両方見るのですが、某所で「新人漫画家がノドまで絵を描いて担当に注意された」という話を読んだので、気になってしまい質問いたしました。新人はキメゴマであってもノドまではみ出して描いてはいけないのでしょうか? 教えて頂ければ幸いです。
A:見開きを除いてノド側の内枠を越えて描かないというのは漫画の基本です。新人のうちは基本をしっかり押さえるようにしましょう。投稿原稿でやたらノド側のタチキリまで描いている人は、原稿の左右がわかっていないか、コマ割りが下手なのだとみなされます。プロの方でノド側の内枠を越えて描いている場合というのは、そうしていいコマといけないコマがわかっていて構図を考えて描いています。何も考えないで描くのと基本を知った上で描くのとでは大きく異なります。基本を知った上であえて描く方は、どういうコマならノド側まで描いていいか、どの掲載誌ならどこまで印刷面が見られるのか、コミックスになった時はどうなるのか、ちゃんと計算して描いているのです。例えば、背のない「中綴じ」の雑誌だと、印刷面の広い巻頭・巻末のページと最も印刷面の狭くなるセンターのページとではノドが1センチ以上異なります。厚目の中綴じ雑誌だと、ノドはほぼ内枠ギリギリのことすらあります。そういう雑誌だとノド側のタチまで描くことは無意味ですし、コマの構図が狂うことにもなります。背のある雑誌でも通常の「平綴じ」と「無線綴じ」とでは開き幅が異なるため、読者が見る印刷面の幅が異なります。ちなみに、通常の平綴じは針金を通したもので、ノド側はあまり開きません。無線綴じは針金を使わず糊のみで背に貼付けるものなので、背を折り曲げれば最もノド側が開きます。ただし、平綴じにしても無線綴じにしても、読むときに雑誌を左右に引っ張って強引にノドの奥を見ようとする読者は例外と見るべきなので、印刷面にかかわらず読者の視野の範囲を考えて描く必要があります。ともあれ、ノド側にタチキリのあるコマが頻出すると、読者にとっては読みにくいものになるので、製本と印刷面の関係を把握していても極力限定して使用するようにしましょう。
もっとも、質問のように新人であっても決めゴマで迫力を出したり空間に広がりを持たせたい場合があるでしょう。1ページ前面タチキリやそれに準じるコマ(ページ半分とかのタチキリゴマ)なら、使ってもほぼ問題ありません。掲載誌の製本方法の違いによって印刷面の左右幅が異なっても、全面タチキリなら小口側(ノドと反対側)にトリミングをずらして構図のバランスを調整可能だからです。
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