【質問と解答】

Q:いつも漫画を描くと、ストーリー=事件の進行になってしまい、肝心のキャラを活かせません。話の中で起きる事件を進めるのにいっぱいいっぱいになって、キャラの心情が二の次になってしまいます。しかし、キャラを重視して描こうとすると事件がうまく進みません。自分は、キャラクターが勝手に動く! というタイプではないので困っています。どうしたらいいでしょうか?




A:漫画家のタイプとして、ストーリー先行型とキャラクター先行型に大別できます。もっとも、発想の際にストーリーとキャラクターは不可分のものであり、それぞれ「どちらかと言えば」という言葉が頭につくものと考えてください。
あなたの場合はストーリー先行型なのだと思いますが、そうした方がキャラクター描写をしなければと考えると往々にして本筋と絡まない独立したエピソードを作ってしまい、作品のテンポが悪くなりがちです。事件(イベント)の中で個々のキャラクターを展開の都合に合わせて駒のように操るのではなく、それぞれのキャラクターの目線に立って「こういうときこのキャラの性格ならこう行動する」「こいつならこの相手に対してこんなセリフを言う」といったキャラクターの行動原理に沿った演技をさせたときに自ずと生じるものがキャラクター描写です。
また、作中で描かれるのはそのキャラクターの人生の一部を切り取ったものでしかありませんから、作家の脳内設定ではこの状況でこのキャラクターがこういう行動をとるのが自然だとしても、事件の中の描写だけでは情報不足で読者に説得力を持たせられない場面が多々出てきます。そうした時、あらかじめキャラの情報、キャラ同士の関係の布石を打っておけるようプロットにエピソードを書き足します。このような創作過程を無意識に処理できる状態を「キャラクターが勝手に動く」と言うのでしょう。
「キャラクターが勝手に動く」という漫画家タイプがあるとしたらそれは天性の才能というべきで、大概は個々のキャラクターに目線を合わせてその行動原理をとらえる手順は何度もネームを積み重ねて身につけます。まずは、ネームを切る前に個々のキャラクターを自分の中で確立させておくこと、一度確立させたキャラクターをぶれさせないこと、キャラクターをあえてぶれさせる必要があるときには説得力のある布石をあらかじめ打っておくことを意識するところから始めましょう。最初から上手くできるものではありませんが、数をこなすことで「キャラクターが勝手に動く」状態に近づけることができるはずです。

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