【質問と解答】

Q:29歳の喫茶店主、地方在住の男性です。
1)28歳で青年誌への投稿を始め、4作落選しました。そのいずれも思い返してみると、高校生を主人公にした他愛もないギャグ漫画でした。そこで若い幻想を引きずってないで、年齢相応の作品を描こうと思い、絵の勉強をして画力が上がったので、劇画調の中年男の苦悩を描いた作品の下描きを始めたのですが、あまりに辛気臭い内容にうんざりして途中で投げ出してしまいました。やはり自分はまだ感性が若いのだと実感しました(最近のアイドルやポップスも好きです)。受賞を狙いに行って、無理に老成した作品を描くことが苦痛です。人生経験を生かすといっても、私の場合老け込んだものではなく、文芸同人誌に純文学を執筆していた「テーマ性」を生かすことなのかなとも思います。まだ精神的に若いので、中年ではなく若者を主人公にして描きたいです。「純文学要素のある若者漫画」を描くことは、この歳で漫画家を目指すのにアリなんでしょうか?
2)ここ最近、勉強の甲斐あって画力がかなり上がり、人生での初持ち込みをしたいと思っています。絵が下手だった時に3回新人賞で落選しています。投稿する場合、落選したら電話が来ないで「はい、それまでよ」という感じですが、それに比べて持ち込みの利点とは何なのでしょうか? 時間の融通のきく仕事なので平日でも上京して出版社に赴けますが、持ち込みは投稿よりもどんな点が有利なのでしょうか? そこらへんが具体的にわからないので持ち込みしたいとは思いつつ迷っています。




A:1)人生経験を生かすというのは、何も中年男を主人公にしてシリアスな日常ドラマを描かなければいけないということではありませんよ。高校生どころか、中学生だろうと小学生だろうと、あるいは動物だろうと主人公にしてもかまいませんし、内容もコメディだろうとギャグだろうとかまいません。年輪を重ねて来たなりのドラマの深みや広がり、キャラクターの掘り下げに人生経験は反映されます。もっとも、ギャグは一番センスが問われるジャンルです。ギャグセンスばかりは勉強して一朝一夕に身に付くものではないので、結果から察するにあなたがギャグに向いていなかったということでしょう。「純文学要素のある若者漫画」というのが具体的にどういうものになるのかはわかりませんが、チャレンジしてみる価値はあるでしょう。喫茶店を経営しているのでしたら、店で飼っている猫の視点で客たちのドラマをかいま見る『吾輩は猫である』的なストーリーなども面白いんじゃないでしょうか。
 2)持ち込みの一番の利点は、編集者の批評とアドバイスが必ず貰えることにつきます。それに付随して、対応する編集者は雑誌の新人賞の選考委員の一人でもありますから、批評の内容によってその雑誌での自分の可能性がどの程度あるか知ることができるいうことも大きなポイントです。