【質問と解答】

Q:4コマの漫画で連載デビューして2年目です。『長いストーリーを描いてみないか』と言われ、ずっとストーリー漫画に憧れていたのでネームを切って担当さんに見せたところ、連載としてやりたいと言われました。ストーリー漫画を何度も賞に投稿していたときは小さな賞(担当さんもつかない賞)しかもらえなかったのに、いきなり連載決定で『何故?』と不思議です。何より、自分では連載を考えて描いたものではなかったので(贅沢な話でしょうか?)、乗り気ではありません。後から読み返してみると、『これって続き読みたいほどおもしろいかぁ?』と思うのです。担当さんにもそれを伝えたのですが、『●●さんも(ある売れっ子作家さん)描きたいものなんてなんにも描いていないと言っていた。あんな売れっ子でもそうなんだ』と言われました。そういうものなんでしょうか?

1)何十巻も出ているような漫画は、漫画家さん自身も、自分の描いているものを愛しているからこそ、描きたいものだからこそ、自信がある話だからこそと思っているのですが、そうではないのでしょうか?

2)私の『乗り気じゃない』という考えは、売れっ子でもない新人漫画家の我がままでしょうか? 干されるのが怖くて、強く『描きたくない』と主張できません。

3)担当さんには、自分が担当している作家の作品を強引に連載にもっていけるような敏腕な方って居るのですか?

ずっと悩みながら連載を続けております。お答え、よろしくおねがいします。




A:1)担当さんの挙げた作家さんの言葉は、本当に作家さんの真意なのでしょうか。台詞自体は当人が本当に言った内容だとしても、前後の文脈、その場の雰囲気や気分、口調のニュアンスによって、同じ台詞でもまったく違った意味になります。表面的な台詞の一部だけを切り出して断じるのはどうかと思います。漫画家さんが描きたくないものを無理に描かせたところでモチベーションは続かないでしょうし、愛情もこだわりもなく描いた作品が読者の心に届くことはないので、長く続けられるわけはないでしょうね。フックのある設定、扇情的な惹句、キャッチーなキャラクターでたとえ一時は読者の気を惹けたとしても、作者自身が面白いと思わないで描いていればすぐに飽きられます。

 2)新人の場合は特にですが、自分が描きたい方向性と向いている方向性にずれがある方は時々います。また、自分の作品の魅力、面白さに自分で気づかないケースもままあります。担当さんはあなたに、その作品のどこを評価し魅力を見出したか、あなたに納得させるべきだと思います。連載の成否は雑誌の死活問題ですから、担当さんも編集長も成算なしにあなたの作品を連載にしたりはしません。ちゃんとそれだけの面白さを秘めているはずです。作家としても連載というのは簡単に獲得できるものではありません。雑誌によってはデビューから5年、6年かかることも珍しくありませんし、一度失った連載枠を取り戻すのに2年3年かかることなどざらです。せっかく降って涌いたチャンスですから、大切にしましょう。そのためには、嫌々描くのではなく、その作品をまず好きになってやることです。自分で魅力がわからないなら、担当さんや読者に再発見してもらいましょう。自分で面白いと思えないなら面白くすればいいのです。元々あなた自身が産んだ子供(作品)です。最初から見限らないで愛情を持って育てていきましょう。

 3)います。実績があって編集長の信頼の厚い編集者ならばそういうことも可能です。ですが、それだけに自分が担当しているという理由だけで成算のない連載は起こそうとはしないでしょう。せっかくの信頼を失墜させる行為ですから。