【質問と解答】

Q:去年、作家さん4人の作品が収録されたオムニバス・コミックスを出版して頂けたのですが、原稿料だけで、いまだ印税らしき収入が入りません。オムニバスで出版した場合、印税は入らないものなのでしょうか?




A:原稿料が出ているということは、描き下ろし単行本ですね。描き下ろし単行本の場合、原稿料や印税については原稿依頼時に作家と編集部(担当編集者)との話し合いで取り決めるもので、業界で統一のルールがあるわけではありません。
 取り決めには、
・原稿料なしで印税のみのケース
・印税なしで原稿料のみのケース
・原稿料と印税の両方が支払われるケース
 の三種類あり、原稿料と印税両方支払われる場合は原稿二次使用の単行本よりも印税率が抑えられるのが一般的です。
 また、一定部数までは原稿料のみで、重版で定められた部数を越えたところから印税が発生する契約もあります。
 あなたの担当した描き下ろしオムニバス・コミックスでは印税はどうなっているかは担当編集者さんに聞いてください。本来、そうした話は原稿依頼を受けた時にすべきでした。もちろん、編集部サイドも作家に契約内容の説明義務を怠っているわけですから責められるべきです。しかし、作家と編集者は一緒に作品を創り上げていくパートナーであると同時に、作家は出版社の社員ではなく、取引先の一個人事業主であるという認識も必要です。製品(原稿)を納品しながら、代金の金額や入金方法等一切を取引先に委ねるなどという商取引はありえないでしょう? 雑誌掲載から単行本化といったシステム化された流れと異なり描き下ろし単行本の場合は事前に条件を話し合い、契約書を取り交わすことが必要です。今後、同様の執筆依頼があったときは今回のことを教訓としてください。
 ちなみに、複数作家によるアンソロジーやオムニバスの印税比率は、総ページ数に対するその作家の担当ページ数の比率で計算されるのが一般的です。もっとも、ラインナップ中に目玉となる突出した看板作家がいる場合(例えば二次創作アンソロジーなどで本家の作家にゲスト寄稿してもらうなど)は、その作家に優遇印税率が適用されることもあります。