【質問と解答】
Q:プロでの仕事を頂くようになってから変に力が入って、ああでなければいけないこうしなきゃいけないと創作技術で悩むようになり、編集さんからも色々言われてるうちに、ネームが思うように進まなくなってしまいました。仕事だからそういうものだと自分に言い聞かせつつも、まわりの作家はたくさん仕上げているのに漫画家に向いてなかったんだろうかと考えてしまいます。プロになる前までは好きなものばかり描いていたので、漫画を描くこと自体が楽しく、何作でも描いていられました。今、その頃の作品を読み返しても技術は確かに足らないのですが、そちらのほうが最近の作品よりのびのびと描いていて魅力的に思えます。プロならば読者のことを常に頭に置いていなくてはいけないと思うのですが、自分らしさが消えているような気もします。自分が描きたいものは、ファンタジーの歴史系恋愛漫画なのですが、今声をかけていただいてる雑誌では学園ものやファンタジーなしのリアルな恋愛漫画を求めてきます。仕事として割り切っていたのですが、自分の作風が雑誌に合っていないのではないかと考えてしまいます。今は手いっぱいで他社にもちこむ余裕がないのですが、漫画を描くこと自体はあきらめきれません。編集さんから、「あなたはこの作家さんの作風と似てるから、うちでやってくならこういう感じが絶対いいよ」と言われ、その方の作品を読んで編集さんが求めているものは理解できたのですが、自分が描きたいものとは異なります。どうしたらいいものか悩みます。
A:要するに、今の雑誌の担当さんがあなたに求めるものとあなたが描きたいものが異なり、それがスランプの原因となっているということですね。解決方法は2つあります。
一つは、担当編集の求めるジャンルの範囲内で自分の描きたい素材や題材を見つけることです。複数の雑誌で描いているベテランのプロともなれば、それぞれの雑誌のカラーや読者層ごとの編集者のリクエストに応じて題材やジャンルを描き分けるものです。しかし、だからといって自分の意に染まないものを収入のために無理に描いているわけではありません。漫画作品は、工業製品ではなく創作物ですから、嫌々ながら描いて面白いものになるはずがありません。そのため、相手のリクエストに応じながらも、そこに自分自身の「面白い」「描きたい」を見出していかなければなりません。ですから、編集者も雑誌のカラーに合わせたリクエストを出しながらも、作家の興味を引きそうな様々な素材を投げかけますし、作家のほうもこれなら自分が乗って描けそうだというアプローチを模索します。その擦り合わせをするのが企画打ち合わせです。あなたも、自分の描きたいジャンルじゃないからと最初から苦手意識を持たず、その中に自分の考える「面白い」を探したり組み込んだりしてみましょう。
もう一つは、自分の描きたいジャンルに合った雑誌を探すことです。今は持ち込みする時間の余裕がないようですから、企画やネームを少しずつ描きためておき、時間が出来たときに持ち込み先を探してください。