【質問と解答】
Q:連載を始めたばかりの新人ですが、編集部が腕の良いアシスタントを紹介してくれません。紹介してくれるのはアシスタント未経験の集中線もろくに引けない若い子ばかりです。最初に雇った子はあまりにも技術がなかったので、大急ぎで厳しく教え込み、自宅での特訓も命じましたが、特訓中に給料が支払われないことに文句をいい辞めてしまいました。仕方なく次の子には仕事にならない特訓の日にも給料を支払いましたが、「仕事って何日に終わりますか? その辺ハッキリしてください」と拘束時間に不平を漏らすようになりました。アシスタントとはそういうものではない、と厳しく言うと、新人作家が何を偉そうにと思ったのか以来関係はぎすぎすしたものになり、結局やめてもらいました。そんなことがあったので、次はアシスタント経験者を紹介してくれるよう編集部にお願いしたのですが、「そういう人はいない」と気まずそうにされます。しかし、別の中堅作家さんには経験者が宛がわれてたりするので、何だか見くびられてるような気持ちになってしまいます。何故編集さんは僕に経験アシさんをつけてくれないのでしょう? 給料はきちんとそれなりに支払うつもりです。僕が期待されてないからでしょうか? 僕の仕事場で基礎技術を身につけたアシスタントが他の作家さんのところでその技術を活かしているのを見ると腹立たしいです。
A:まず、編集部は連載作家である自分に腕のいいアシスタントを紹介するのが当然だという意識を捨ててください。漫画家とは個人事業主であり、出版社とは取引先という関係です。ですから、漫画アシスタント(バイト、社員)というのは本来事業主である漫画家が自分で求人するものであり、編集部は単に取引先への無償サービスとしてそのサポートをしてくれているだけです。もちろん編集部サイドにも、腕のいいアシスタントを紹介することで漫画家によりクオリティの高い原稿をあげてもらいたいという意図があっての無償サービスなわけです。その点では、編集部もあなたに質の高いアシスタントを紹介したいと考えているはずです。ですが、編集部の紹介できる手持ちのアシスタント候補というのは、新人賞投稿者やデビュー未満の受賞者が大半です。そして、彼らのほとんどはアシスタント未経験者です。また、その中に腕のいいアシスタント候補がいても、彼らは出版社の社員ではないので辞令を出してどこそこへアシスタントに行けというわけにはいきません。彼らの側にもアシスタント先を選択する自由があるのです。若いアシスタント候補というのは収入以上に技術を習得することを目的にアシスタントをするわけですから、当然ながら有名作家や人気作品の仕事場を希望します。希望者が多い以上、先生のほうでもスタッフ選考基準を厳しくしますから、技術のある人間は皆そちらにいくわけですね。それが、メジャー作家がアシスタント供給において優遇されているように見える理由です。
では、新人は腕のいいアシスタントを獲得する手段がないかというと、そういうこともありません。まず、自分で探す場合は、同人や漫研時代、専門学校時代のつてをたどる、もしくはアシスタント経験があればその時の同僚に声をかけたり先生にお願いして紹介してもらいます。また、ネットにはJ.A.C.(JAPAN ASSISTANTS CLUB)などのようなアシスタントの求人求職サイトもあります。ただし、ネット上でのやりとりは様々なトラブルが想定されますので、自己責任で利用してください。次に、各専門学校に求人するというのもよくあります。これは編集部に依頼してそちらから求人依頼してもらうといいでしょう。作画見本をつけて応募してもらうので、腕は事前にチェックできます。そして、今紹介されている編集部手持ちのアシスタント候補についても、より技術のある方を紹介もらえる可能性のある「時期」というのがあります。新人賞選考直後や他作品の連載終了時です。新人賞では技術はあるもののストーリーに難があって選にもれる方がいますから事前に担当さんに言っておけばそういう方をアシスタントに押さえられますし、後者はスタッフを解散しますから次の仕事先が決まる前に声をかければ経験者を獲得できます。そういった時期以外で急募する際は基準を下げなければなりませんが、そういった時でも担当さんを通じて事前に作画見本(集中線や様々な効果、背景カット)を提出してもらい、自分の基準に見たないうちは採用しない、ただし自分で練習して繰り返し作画見本を提出してもらっても可、という方針であれば採用後のトラブルはかなり避けられるはずです。実際、編集部からアシスタントを紹介してもらう場合、作画見本もしくは作品コピーを提出してもらい、さらに面接と1話分の試験採用を経て本採用とするのが一般的です。事業主として社員やバイトを採用するわけですから、編集部から紹介されたからといってそのまま受け入れず、あなた自身の判断と責任でアシスタントを雇うようにしてください。