【質問と解答】
Q:一応漫画家デビューさせてもらっている者なのですが、最近気になって不安になってきたことがあります。それは「皆に支持されている作品が好きになれないこと」です。売れている上位作品ほとんどを面白いと思えないんです。べつに嫌っているわけではないですし、「こういう構造だから読者はこう思うんだな。だからいいのかな?」というのは理解できるのですが、自分がワクワクしたり楽しんだりできません。べつに「わたしは人とは違う」ということを誇示したいわけではないです。逆に、これから漫画を描くにあたり皆に支持されたいと思っているので、それと違うとなると支持されないんじゃないかと不安です。少女漫画でも、「絵が可愛い」と言われて支持されているのを見ても「どこが!?」と思ってしまいます。自分が漫画を描くとき、自分は「これいい!」と思って描くのですが、こんな感覚で将来支持される漫画家描けるのでしょうか。不安です。
A:大ヒット作品があまり面白く感じられないことで、自分の感性に自信がなくなってきたのですね。売れている作品の構造が分析できているなら、創作者としては別に問題ないでしょう。個々人の感性が選ぶ嗜好というのは多種多様なものであり、大ヒット作品はその要素の平均値をまんべんなく押さえたものであることが多いです。ですから、広く一般大衆の支持を得ますが、漫画作品をたくさん読んでいる者ほどより先鋭的でニッチな嗜好を満たす作品を選ぶようになります(尖っていながら大ヒットしたエヴァや進撃の例もありますから、そう単純でもないのですが)。ですから、ヒット作を面白く思えないこと自体はさほど心配しなくてもいいです。ただ、自分の感性が大多数とズレがあるのかどうかは第三者の目で確認してもらう必要はあります。担当編集や友人・家族など忌憚ない意見を述べてくれる人に、自分は「これいい!」と思って描いてるんだけど、どう思う? と聞いてみてください。