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【質問と解答】
Q:私は今現在、会社員をしながら兼業で漫画を描いています。2~3か月に1回程度読みきりを描いているのですが、まだコミックスは出ていません。もっと漫画で収入を増やしたい、連載も持ちたい、コミックスだって出したい──叶えたい夢がたくさんあります。もちろん現実は厳しく、これからもっと頑張らなくてはいけません。今お世話になっている出版社以外にも仕事の幅を増やしたくて持ち込みに行ったりもしています。ネームから見るよと言ってくださる出版社さんもいくつかあり、お仕事の原稿以外にもどんどん作品を描いていかねばならない、今はそんな状況です。そんな中で、会社員としての自分と漫画家としての自分、その間で苦しんでいます。もちろん自分にとって大切なのは漫画。それは絶対です。ですが、会社員である以上は社会人としての義務を果たせねばならないというのも事実で、特に締め切りの前などは徹夜や短い睡眠時間が続き、日中の仕事が辛くて仕方ない、ということが多いです。また、元来時間の管理があまり上手くなく、平日は夜遅くまでやって、土日になるとストレス発散で逆に寝過ぎたり遊んだりして思ったより進まない、なんて悪いサイクルになっている時もあります。絶対的に作業時間も休息時間も足りず、焦りばかりが募ります。かと言って、漫画を趣味にとどめて会社員として生きる覚悟も、会社を辞めて漫画家になる覚悟も、どちらも恐ろしくて出来ません。また、2足の草鞋で生活するのも、今の仕事量のままならまだ良いのですが、これ以上増えるとやはり厳しいです。漫画のジャンル的にも、一回連載をとれば何巻も続く可能性があったり週刊でめちゃくちゃ忙しいというようなジャンルではないので、「連載もとれたし、物理的に会社通いは無理だな」ともならず、結局会社と漫画をどっちにも絞れずギリギリの状態で続けていく──数年後はそんな状態に陥るのが目に見えるようです。具体的に、これを聞きたいという質問がハッキリ決められないのですが、一体これからどのようにバランスを取って漫画を描いていけばいいのか、何を諦めて、何を諦めずに続けていったらいいのか、それがわからなくなってしまいました。
A:はっきり言いますが、漫画家と会社員の両立は無理です。小説ならば可能ですが、漫画は肉体労働といってもいい作画作業があります。今は2〜3か月に1本の読み切りという生産量ですからなんとかなっていますが、連載を持ったり、複数の出版社で仕事を受けるようになると、限界はすぐにきます。今でさえ、締め切り前には睡眠不足で万全には遠い体調で出社しているということですから、会社員の責務を十分果たしているとは言い難い状況でしょう。年齢を重ねれば、ますます体力的にきつくなってくるはずです。あなたの中での優先順位は漫画ということではっきりしているのであれば、連載獲得や複数の出版社での仕事獲得を機に退職して漫画家一本に絞るべきでしょう。とはいえ、会社を辞めて固定収入を失うことが怖いのはわかります。生活の安定を重視するなら、漫画は今の仕事量でやれるところまでやるか趣味として同人活動をするにとどめ、会社員としての業務に傾注してください。今のままでは、体を壊して会社員としても漫画家としても中途半端に終わる破局があまり遠くない未来に待っています。いずれかの道を選択する時がきたのだと、覚悟を決めましょう。