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【質問と解答】
Q:3年前にデビューさせていただきましたが、まだ二作しか掲載されていない新人です。デビューするまでは数作投稿していたのですがどれも賞に入らず、1年ぶりに描いたものでいきなりデビューとなり、そのときにはじめて担当がつきました。その後も学生生活を送り、約一年後に二作目が掲載されましたが、ここで大学受験のため担当さんとの連絡を断ちました。無事に大学受験が終わり、またネームを待っていますと言われたものの、受験勉強の解放感から半年ほど大学生活を謳歌していました。そして、このままではいけないと思い長期休暇中に再びネームを送ったものの、最終的にはボツとなりました。それから別の話のプロットを送り、この話でネームを描いてみましょうとなったところで授業が始まりまた描けなくなってしまいました。描けなくなった理由は、もちろん他のことを優先してしまい描く時間をとらなかったこともありますが、いざ描こうとしてもペンが進まないということもありました。それから何の連絡もせず9か月ほど経った今、再びネームを送ろうと思っているのですが、送る際に遅くなってしまったことに謝罪をするべきでしょうか? また、前のプロットに書いていた話とはまた別の自信のある話のほうを送りたいと思っているのですが、これは失礼なことでしょうか? そして、毎年ある編集部のパーティーに今年はついに招待されませんでした。これは見限られたということでしょうか? デビューしているという恵まれた状況にいるにも関わらず、遅筆で、日常生活に流されてしまった自分が悪いのは重々承知していますが、また担当さんと良い関係を築きたいと思っています。また、日常生活に流されないように自分を追い込む方法などもありましたら教えていただきたいです。
A:正直見放されていてもおかしくない状況です。相手の立場に立ってみると、よく理解できるでしょう。ただ、デビューをしたといっても雑誌のレギュラー作家として認知されているわけでなし、あなたが本気でプロを目指す気があるのかどうか見守っている(見定めている)状態でしょうから、さほど深刻に考えることもありません。やる気があるなら相手をするが、描く気がないなら放置されるだけです。今後大学の卒業が迫って進路を否応でも決めなければならなくなるまでに、あなたの中で今すべきことを定めましょう。4年になれば就活や卒論、ゼミなどで忙しくなりますから、実質3年間しかありません。大学時代の3年間というのは本当にあっという間で、その短い間に将来のビジョンを定めなければなりません。漫画を描くのはそのうちの一つのアプローチです。別にプロ漫画家にならなくても、普通に就職して趣味で描いたり読み専に戻っても誰に咎められるわけでもありませんが、せっかくのデビューをもったいないと考えるならこれからの3年間を漫画家で生計を立てていけるかどうかを見定める最後のチャンスとして大切に過ごしてください。デビュー済みというアドバンテージを生かすも殺すもあなた次第です。デビューする新人はどんどん出てきますから、ぼやぼやしていると2〜3年もすれば「そんなやついたっけ?」と言われるようになりますよ。
担当さんとの関係も編集部との関係もあなたの漫画家を目指す覚悟が見えるかどうかにかかっています。今は、編集部的には、「お客さん」扱いと言っていいでしょう。本当の意味で信頼関係を築くには、あなたに「仕事」としての意識が芽生えなければなりません。連絡が空いたために打ち合わせたプロットとは別のネームを提出すること自体は許容範囲ですが、長く連絡を絶っていたこととネームが遅れたことへの謝罪を仕事相手である担当さんにするのは当然の礼儀ですし、別のネームを提出する理由の説明もちゃんとすべきです。
また、自分を追い込むには締め切りをちゃんと設定して、一度設定した締め切りは何があろうが死ぬ気で守ることです。漫画家になることは義務でもなんでもないのですから、それを目指すためには自分の中で甘えを排さなければなりません。大学を卒業した4年後の未来の自分──漫画家としての自分とサラリーマンやフリーターの自分とを思い描いてみてください。未来を選ぶのは今のあなた自身です。