漫画街

新人漫画家相談室TOPへ

新人マンガ家相談室

【質問と解答】

Q:各雑誌の新人賞の選考基準についての質問です。新人賞では漫画の実力、面白さ、好み、雑誌の傾向に合っているか等で選考していくと思います。例えばジャンプやマガジン等メジャー少年誌だと面白いか否かに加えて、この作家が将来メジャーになりうる(例えば、アニメ化やグッズ化できる)作品を描く作家になるかどうかも選考基準になるのでしょうか? また、確固とした選考基準がなくても編集部側にはそういう意識があったりするのでしょうか? 逆にいわゆるマイナー系の雑誌ではそういうメディアミックス等は考えず、漫画の完成度に加え編集者の好みだったりが評価に加わることはあったり、その傾向がメジャー誌より強かったりするんでしょうか? 例えば、ジャンプではある作品が、言い方は悪いですが、売れそうにない、利益を生みそうにないから連載できないと判断されることもあれば、そこまで売り上げ重視ではない雑誌では漫画の完成度に加えて単に気に入ってくれたからデビューできたなどの事はあるのでしょうか?


A:まず、大前提として、「売れそうにない、利益を生みそうにない」作品を連載する編集部は、メジャー誌だろうとマイナー誌だろうとありません。「商業誌」である以上、個人の趣味で作っているわけではないですから、売り上げを重視しない編集部などすぐに会社は解散します。ですから、売れそうにないけど自分の好みだから連載するなどというのは商業誌の編集者として失格です。全ての商業誌の作品は、あなたがマイナーに思える作品であっても、絵が下手だろうと題材がニッチだろうと、そこに商業的な勝算が見込めると編集部が判断したからこそ掲載されているのです。ただし、100万部超のメジャー週刊誌と5万部以下のマイナー誌とでは商業的成功の基準が異なります。100万部超の雑誌であれば、コミックス10万部以上でないと及第点とは言えません。基礎読者が100万人いる雑誌で1/10に満たないしかファンがつかない連載陣ばかりになってしまえば部数はどんどん落ちていってしまうからです。そうしたメジャー誌のファンの多くは、作家ではなく作品についたファンですが、一方で漫画マニア向けのマイナー誌だと固定読者を持つ作家性の強い漫画家が主体となります。2万人の確実な固定読者がいる漫画家というのは5万以下の少部数雑誌にとっては貴重な存在です。マイナー誌だとコミックス2万部で及第点、5万部以上でヒットというのが目安でしょうか。そのように、メジャー誌とマイナー誌で商業的成功の基準の違いや求められる作家のタイプの違いはありますが、どちらも利益を求めて雑誌や単行本を作っていることに変わりはありません。
 新人賞の選考基準にアニメ化やグッズ化の可能性を設けているところは私の知る限りではありません。なぜなら、投稿段階でそこまで見込める投稿作はまずないからです。もうひとつには、漫画の編集部は基本的にアニメ化やグッズ化を目的としているわけではなく、あくまで漫画作品としてのヒットを目指し、その結果としてアニメ化やグッズ化があるためです(幼年誌は例外)。要するに新人漫画賞は、キャラクターデザイナーを募集しているわけではなく、あくまで漫画家を募集しているのです。この漫画作品としてのヒットを目指すのが第一義という姿勢は、メジャー週刊誌であろうと変わりはありません。とはいえ、将来のアニメ化やグッズ化に関連する要素は、作品評価をする選考基準の中に含まれています。「魅力ある絵柄」や「キャラクター性」「キャラクターデザイン」といった要素です。これらは、作品自体のヒットに重要な要素であると同時に、メディアミックス展開をする上でも大きな武器となります。そういった意味では、選考基準の要件としてカテゴライズされていないにせよ、将来的なアニメ化やグッズ展開の資質も含めて審査していると言っても、全くの間違いではないかもしれません。