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【質問と解答】
Q:デビュー後、初連載で原作付きの漫画の作画を担当し、少し前に連載が終了しました。次はオリジナルをと思っているのですが、自作で連載用のネームを作った事が無く、悩んでいます。プロットまでは作るのですが、うまく話を広げることができず壮大になりすぎたり、より完璧にしようとして設定のアラ探しのようなことをしてしまって結局勢いの無いつまらない話を作っている気がして没にする、というループに陥っています。いただいたシナリオを発展させるという作り方になれてしまったのでしょうか? なんとなく、“物語の中に入り込んで作る”ということができず、“俯瞰で考えている”ような感じで自分で読んで面白いと感じません。そんな状態のネームでも仕上げて送るべきでしょうか? 一度連載をしたからにはそれなりのレベルを求められるような気がして、しり込みしています。そもそも私に物語を作る力が見込めないから原作付きで連載となったのかな、などとネガティブなことばかり考えてしまいます。結局その連載も短期で終了してしまいましたので、絵についても自信を無くしている状態なのですが。また、連載会議にかけるネームというのは事前に担当さんと打ち合わせなどをし、綿密に準備をして提出するものだと思っていたのですが、雑誌によるのでしょうか? 主観ですが、もっと詰めなくて大丈夫かな、と不安なネームでの会議提出となりました。あまり期待していないけどとりあえず出すだけ出す、ということはあるのでしょうか? 色々考えすぎてどうしたらよいかわからず、こちらに相談させていただきました。よろしくお願いいたします。
A:私が所属する編集部では、新人でオリジナルものの連載企画を企画会議や編集長に持ち込むまでには以下のプロセスを経ます。
1)企画出し。基本的に自由に発想してもらいますが、担当からある程度のリクエストを出すこともあります。鉛筆書きもしくはデジタルでのラフのキャライメージと作品概要を2〜3案出してもらい、検討の上1案に決定。その際に、内容について作家と担当の間で前打ち合わせを行う。全ボツの場合、改めて2〜3案出してもらうことになるが、方向性は絞り込む。
2)設定と詳細プロットを詰める作業。作品の土台なので、この段階で数度の打ち合わせを行います。
3)1話目のネーム。作家も初めての舞台で初めてのキャラを動かすわけですから、固まるまでに打ち合わせしつつ数度のネーム直しを行うのが普通です。
4)企画プレゼン用の素材作成。最低限、ペン入れして仕上げまでしたメインキャラの設定画を作成してもらいます。SFやファンタジー、歴史物など作品内容によっては美術設定やイメージボードも用意してもらいますし、前作で作画が低評価だった方には作画見本も数ページ描いてもらうこともあります。
この資料で結論が出ることもあれば、保留となって3話までのネームや作画見本を再提出することもあります。
企画を連載会議に出したり編集長に提出する時は、担当も作家も自信作を提出するものです。中途半端な段階で審判を求めるのは企画を自ら潰すことです。ただ、その企画についてこれ以上いじりようがないという段階になっても今ひとつと感じられる時に、長い時間をかけて創ってきた企画に引導を渡す意味合いで企画会議にかけることはあるかもしれません。ことによると、作家と担当の間で煮詰まっていた企画に「ここをこうすればいけるんじゃない?」と別のアプローチを与えてくれることもないとは言えませんから。ですが、まだまだネームを詰められるはずだ、もっといいネームに仕上げられるとあなたが考えているのであれば、次の連載会議まで猶予をもらえるよう担当さんに願い出てみてはいかがでしょうか。
オリジナルものの企画作りに自信を失っているのであれば、また原作付きや小説やアニメ、ゲームのコミカライズ企画のコンペ参加の意思を担当さんに伝えてみてはいかがでしょうか。自分の外部の発想やストーリー展開やエピソード作りに触れることは刺激になります。そういう仕事をしているうちに、自分の描きたいオリジナル企画も見えてくるかもしれません。
ともあれ、担当編集がいるのですから「プロット段階から相談に乗って欲しい」「もっとネームの打ち合わせをして欲しい」とういうように、連載企画用のネームを作るにあたって自分が望んでいる進め方や、物語にうまく入り込めない等の抱えている不安を訴えて相談してみてください。