【質問と解答】
Q:アシスタント先の選び方について教えてください。初めてアシスタントをしてみたいと考えているのですが、アシスタント先はどう選べばよいのでしょうか? なるべく画力の高い先生のほうが良いのか、またしっかり指導してくださりそうな方のほうが良いのでしょうか。また、一度受けたらどれ位続けなければいけないのでしょうか? アシスタントをして得られるメリットも教えてください。
A:アシスタントには「レギュラー」と呼ばれる定期アシスタントと「ヘルプ」と呼ばれる臨時アシスタントがあります。また、レギュラーにもスタジオの社員としての専属アシスタント(週刊連載のアシスタントは大抵これ)と、月の大体何日から何日までの間に呼ばれたら行く形のものがあります。後者は大抵月刊連載の先生なので、2〜3人の先生の仕事場を掛け持ちする方もいます。さらに、在宅のデジタルアシスタントという形もありますが、こちらは遠隔地でもアシスタントができるというメリットはあるものの、在宅作業になるので指導は受けられません。アシスタント先を選ぶ際は、勤務形態(レギュラーかヘルプか在宅デジアシか)、勤務地、勤務日程、勤務時間、給与(同じ職場でも作業内容・能力によって上下があります)、交通費・食費(もしくは賄い)の支給の有無、喫煙の可・不可といった条件面と、先生の画風で選びましょう。例えば劇画とデフォルメ画では、同じ漫画でもテクニックそのものが異なります。ですから、学びたいと考えてアシスタントをするのであれば、自分の目指している画風に近い先生を選ぶべきでしょう。また、しっかりした指導を望むのであれば、担当編集者がついてからその方に紹介してもらうのがいいです。勤務期間については、レギュラーであれば一年以上は続けるつもりでいてください。実際のところ、スタジオの戦力になるに半年くらいかかるので、あまり早く辞められると雇った甲斐がないことになります。
アシスタントのメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
1)現場の実戦的な作画技術を学べます。
今は漫画技術書やウェブサイト等で技術は知ることができますが、それを実際にどのような箇所でどう活かすかということを知ることができます。また、先生や他のスタッフのレベル次第ですが、こうすれば同じ効果でもより効率的に描けるとか、ここは手を抜いて大丈夫なところとか、こうすれば早く仕上げられるとか、実戦的な裏技を知ることができるかもしれません。これはアナログでもデジタルでも同じです。そして、こういう線を描くにはこのメーカーのこのペン先とか、ホワイトにはこの商品がいいとか、ペン軸をより使いやすくするためにこう改造するといいとか、画材の手入れにはこう工夫しているとか、画材の種類や使い方についての生の情報交換もできます。
2)アシスタントへの指示出しの仕方を学べます。
これは自分がアシスタントを使う立場になった時に役立ちます。アシスタント経験がないと、将来漫画家になってスタッフを抱えた時に、どのように作画指示をするか、仕上げ指定をどのようにするかわかりません。
3)ペンに触れながら収入を得られます。
収入のためにアルバイトをする必要がある場合、他のバイトに就いて週の大半をそれに拘束され、その間ペンを使わないでいるとペン入れの感覚を鈍らせてしまいます。仕事にアシスタントを選んでいれば、他人(先生)の作品とはいえ、ペンを使い続けていることでその感覚を鈍らせることなく、さらに修練させ経験を積むことができます。
4)先生や同じ漫画家を目指すアシスタント仲間との交流ができる。
専門学校などにも通うことなく独学でデビューした漫画家さんは、職業柄他の漫画家さんと知り合う機会はあまりありません。アシスタントは、そうした同業者との交友関係を築く場でもあります。確かに、人間同士のことですから摩擦が生まれたり、初めて会う人と交流することに性格的に向かない人もいるでしょう。ですが、同じ漫画を描く者同士の語らいの中で他者の漫画観に触れたり、作劇理論やネームテクニックを得たりするメリットも無視できません。また、わかりやすい実利面からいうと、将来漫画家になって急場のアシスタントが足りない時にかつてのアシスタント仲間にヘルプを頼んだり、かつての先生とアシスタントを紹介し合ったりというアシスタント・ネットワークを築けるメリットもあります。もちろん、明らかなパワハラを仕掛けてくる人間(アシスタント仲間ではなく先生がそういう人間である場合もありえます)のいる仕事場には無理をして居続けることはありません。別のアシスタント先を探せばいいだけの話です。