【質問と解答】

Q:今後の進路で悩んでいます。昨年某少年誌で担当がつき、担当さんと作った一作目で小さいながら賞をいただきました。現在二作目の結果待ちです。私は今大学3年で、3月からは本格的に就職活動も始まります。以前あった質問で、本気で漫画家を志すなら就職よりアシスタントをしながら連載を目指した方が良いという旨の回答を拝見して、来年度を就活にあてるべきか、アシスタントに入るための画力向上を兼ねた作品づくりにあてるべきか迷っています。私としては多少辛くても上京して漫画家を目指したいと思っているのですが、両親のことを考えると、ふん切りがつきません。父も母も高齢で、学費のために仕事を続けてくれている現状です。常々公務員になってほしいと言われていて、一応教員免許は取得する予定ですが、そういった職につきたいとはどうしても思えません。しかし卒業後、両親に負担をかけず、上京して金銭的に自立した生活を送るとなると、アシスタントやアルバイトで賄えるものか不安です。両親を説得するにしても結果を出すしかないので、次の作品のために就活を捨てるか、安定した職につくため制作活動を休止するか、そろそろ決断しなければなりません。二作目の結果次第だとは思うのですが、今たいして実積のない私が来年上京したいというのは大それた話でしょうか。担当さんに相談してみたいとも思うのですが、地方在住で直接お会いしたこともありませんし、あまり期待されていない気がしてどうにも言い出せません。編集者の方に作品以外のこういった話をしても良いのでしょうか?



A:担当さんに相談してみてもいいのですが、就職して働きながら漫画家を目指すのがいいか、上京してアシスタントをしながら漫画家を目指すのがいいかとただ聞いても、責任回避の慎重な意見か、いい加減な安請け合いが返ってくるだけです。担当編集といってもあなたの漫画家としての将来を保証することはできませんし、一人の人間の人生設計に責任を持つことはできません。結局はあなた自身が自分で選択し、その選択の結果に責任を持つしかないのです。ですから、相談するにしても漠然とどちらがいいか聞くのではなく、編集部内での自分の評価と立ち位置や自分がプロになるためにクリアすべき課題、デビューや連載までの担当さんが描くビジョンといった、選択の判断材料になることを聞いてみましょう。  大学卒業を控えて人生の分岐点を迎えて立ちすくんでいる心境はよくわかります。両親のことを言い訳にはしていますが、安全パイとしての就職を選択から外せないというのが本音だと思います。漫画で生計を立てることができるかどうかは未知数なのですから、その悩みは当然です。とはいえ、単なるバイトと違い、就職して働くということは学生のあなたが考えるほど甘いものではありません。職場環境や仕事内容によほど恵まれない限り、漫画を描く時間は確保できませんし、休日さえも1週間の疲れを癒すだけで費やし執筆のモチベーションを維持することさえままならなくなると考えたほうがいいです。趣味で描いて時々同人活動をしたりWEBでイラストやショート漫画を発表するくらいがせいぜいで、商業誌デビューを目指してコンスタントに執筆活動するというのはまず無理でしょう。かといって、上京してアシスタントをしながらプロを目指したとして、連載はおろかデビューさえも見えなければ、いつしか最初の熱意も磨耗し、挫折して就職することになりますが、そうなると新卒よりずっとランクの落ちる就職先になります。ですから、まずは担当さんの率直な意見を引き出して自分の漫画家志望者としての立ち位置と可能性を確認しましょう。可能性があるなら、卒業までにデビューすることを目標としてください。デビュー程度ではご両親への説得材料にはならないでしょうが、何もないよりはましです。少なくともあなたの覚悟は示すことができるでしょう。逆にデビューできなければあきらめて就職する、と決めてはいかがでしょうか。つまり、卒業までにデビューできるか否かを進路選択の材料にするわけです。デビューできたならば、少なくとも漫画家としての可能性があるということですから、あとは努力次第です。上京費用は親に頼れないでしょうから、今から貯蓄もしておきましょう。