●単純な格闘ものでなく抱えてるものがあった作品でしたね
そう。
アクションシーンが強烈な拳法でしょ、
自分が破裂するっていう…。
そうすると一つ書き方を間違えると、
ただの残酷なストーリーになっちゃうのよ。
だからそれをどうやって納得させるかっていうと、
もう、悲しさしかないのよ、納得させるには。
悲しさとか、愛だとか、いわゆる泣かせる浪花節、
そういうのを入れて行くと、
残酷さがきれいに消されて行くっていうのがあって、
原先生の強烈なアクションに俺の作った浪花節がうまく入っていった。
当時『北斗』を真似して、もうバッコンバッコン
やりだしたのよ、みんな、他の漫画が。
ある種、その残酷なシーンだけ取って行くわけよ。
そうすると、あー、こいつら馬鹿だなって、
『北斗の拳』の一番おいしいところはずしてやがるって…。
一見おいしいところなのよ、
その派手なアクションのところとか、残酷なシーンってのは。
でもそこは全然違うのよ。
そんなの、そこじゃないよ。
この作品が、当たったのはそこじゃないよってのは、
ずっと思ってたけどね。
(先生の作品の中では一番人が死んでる作品じゃないですか?)
『ドーベルマン刑事』にしたって、いろいろな作品見ても、
多分、日本で一番人を殺す作家だと思われてるよね(笑)。
(先生じゃないと単なるグロになってしまう気がしますが)
作品になんないと思う、多分。
それは一種のこだわりだよね。
だから、テレビになるときも、
もう血の色を消せ、赤使うな、青にしろとか、
それはすっごい注文付けたよ。
これ、お茶の間に流れたらグロだから、
絶対ダメだから色消せとか、無機質にしてくれとか、
ガラスが壊れるようにしてくれとか、そういう形でずいぶん言ったよ。
生の血で飛んで、生の血が破裂するとかってのは、
シルエットにするなり、無機質でやってくれ、描かないでくれって、
ずいぶん注文してたよ。
(作家によってはそこにリアリティーを求める場合もありますが)
それね、いつも言ってるんだけど、
爽快感と嫌悪感って紙一重なのよ。
あるところまでは爽快なんだけど、
それを1個超えるとあとはもう嫌悪感しか残んないの。
その爽快感と嫌悪感を勘違いすると、
とてつもないグロの作品になっちゃうの。
だから…、爽快感と嫌悪感の狭間を
ものすごい神経使って書いてたよ。うん。
だって、俺、嫌悪感のあるの見たくないわけ。
テレビでも残酷なシーンって目閉じるでしょ。俺、閉じるの。
それはもう、自分の中であるから、
だから、あんまり血がぶしょぶしょ飛ぶってのは好きじゃないのよ。
いろんな誤解されるわけでしょ、俺の作品は人いっぱい殺すし、
でも、だからこそ身につけてる処世術でもあるんだよ(笑)、
俺の中では多分…。
まあ、基本的にバランス感覚持ってるなとは思うよ、俺の中ではね。
●この作品のどこが受けたのでしょうか?
何が受けたか…、ただ原哲夫の絵ってのはやっぱり強烈だからね。
もちろん俺の浪花節とか近未来とか、その舞台設定とかを
原先生の絵以外で描いても絶対ダメだから。
本当にそういう意味では原哲夫の絵と武論尊のストーリーと、
もうこれ以上はないってくらいマッチしたってことだろうな、多分な。
原先生の絵の立ち姿とか、強さとか、見せる絵は抜群だもんね。
やっぱりすごいと思う(しみじみと)。
●今後、『北斗の拳』に匹敵するような作品を少年誌では挑戦しないのですか?
(笑)肉体的に無理やな。
結局、そのジャンルでは絶対もうダメなのね。
俺、同じジャンルってあまり書かないのよっていうか、
1回書いたジャンルってのは新鮮でないわけ、書いてて。
そうすると俺の中では新鮮さがないと書けない。
そうすると、いわゆる格闘系のものは、
『北斗の拳』以上のものは書けないわけでしょ。
じゃあ違うジャンルで果たして『北斗』以上のものが書けるかっていうと、
……書きたいけどね、書きたいけど、書いちゃったらすごいよ、多分。
それこそ馬に乗って(笑)走り回ってるよ。
ただ、もう1回、俺の中で神様が降りて来るかの話だけど。
神様ってのはね、いろんな才能のある作家と才能のある編集と、
それが俺の回りに降りて来て、
で、俺の才能がもう1回新鮮なものを感じてって、書ける、
ということ。
それがあれば…、うん、なんとか……。
可能性を否定するのは辛いから、
一応、可能性ありってことにしておくけど、
8割がたはキツいかなって(笑)。
まっ、2割ぐらいはね、
そういうね、神様が微笑んでくれたらやれるかもしれないな。
まだ捨てちゃあいないね。
捨てたら、この仕事やってられないからね、うん。
これでいいやと思った瞬間に終わるからね、多分ね。
※本文中( )内の表記、および[編集メモ]漫画街。氏名敬称略。
記録に誤りや漏れなどありましたら、ご指摘ください。
(第7回 終)
★次回は『池上遼一先生とのコンビ作』のお話をお聞きする予定です。お楽しみに。
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