●これからも語り継がれる作品だと思いますが、
  今現在の先生にとってはどんな作品ですか?


………………………。

今までの中で一番でっかい、でっかいどころじゃないっていう…、
巨大魚だよな。
俺の中で針にかかった一番でっかい魚っていうのは否定出来ないことだよね。
そういう印象と今偉そうなこと言って飯食ってるのも、
やっぱり、その冠があるからっていうのもあるし…、
この作品が好きか嫌いかっていうのは別にしておいてね。
まっ、嫌いってことはないけどね……、なんだろうなぁ……、
一つ、俺自身がある意味、浪花節の武論尊っていうか、浪花節の史村って、
どっかでそれがあったのが、
この作品でやっぱり俺は一つ浪花節っていうのを持ってるなって…。
すごい武器を持ってるぞっていうのを認識させられたっていうか…、
そうだな、そこかな。
それと、やっぱり男をわりとうまく書けるかなって…。

まっ、試行錯誤の中でやってて、一つ、こう…、
自分の最大の武器を改めて確認出来た
っていう作品かもしれないね、多分。
でも、自分でもやっぱり今、ある意味判断出来ないくらいの
でっかい魚になっちゃってるでしょ。
釣ったときに、おお、でけえぞとは思ったんだけど、
それがアニメになったり、テレビになったり、
いろんなことになったりすると、俺が思ってたより、
どんどんどんどん、でっかい魚になってたってのがあって、
ある種、とまどいもあるよな(笑)。
あまりにもでかくなりすぎたから…。
その反面のうのうと、おっ、食えるぞってうれしさもあるな。

(未だにでかいですからね)

終わって10年以上経ったんだけど、そうなのよ。
本来なら骨だけになってるはずなんだけどね、
まだ肉が付いてんのよ。

(食い切れない感じですよね)

知らないところに、まだ肉付いてんのよ(笑)。
びっくりするよね。
だから、いろんな作品があるんだろうけど、
俺の中でやっぱり…、
次の世紀とかに1作だけ、俺が全く意識しないでも残って行くのは、
『北斗』なのかもしれないなってのはあるよね。

そうだな。
やっぱり俺が思っている以上にすごい作品だったってのは、
正直なところだね。
だから、原作も絵も全部自分でやってて、
武論尊が全部それをやったってことだったら、すごいと思うよ。
もう増長なんてもんじゃないと思うよ。
もうふんぞり返ってるところよ(笑)。

(ラオウのように?)

もう馬のって歩いてるよ!(笑)
だから、『北斗の拳』の武論尊ですって、
何処行っても『北斗の拳』を書いた武論尊です
って言われること自体は、
とてつもなくうれしいことなんだけどねえ…、
そういう作品がない作家よりは恵まれているんだろうけど、
そうじゃなくてね、やっぱり、違う作品でもあれを書いた人だよって、
あぁって作品を書かなきゃいけないんだけど、
でも、やっぱりそうはいかないよね、みんな。
みんなひとつだよね(しみじみと)。

でも…それがあるだけ幸せなのかな。

それはやっぱりうれしいんだけど、
違う冠でもって言うのは…、欲張りかもしれないけど、
どっかであることはあったよな。
でも、そこまで化けちゃってるからな、きっとな。

当時の赤ん坊だったり、小学校のころ、怖くて見れなかった子達が、
今、ちょうど高校生になって見出してるわけでしょう。
そうするとまったく新鮮なものとして見るから、
あと10年もすると、また新しい肉が(笑)くっつくかなってね…。
だから、すっごい恵まれてはいるよね、うん。

毎週毎週が勝負で書いていたから…、
そういうふうになるなんて思ってもいないからね。
書いてるときはね、ただ受けてるなって感覚で…、
ジャンプもどんどん伸びてるし、もう他の作家との…、
当時ゆでたまごの『キン肉マン』だとか、
車田正美の『聖闘士星矢』だとか、
いっぱいライバル作品もあって、
負けるか、負けるかって、
編集もそうだし、俺たちもそうだし、それでやってたから…。


●打ち合わせはどんな感じで?

原先生が前の号のネーム割ったら編集が持って来て、
いつもの通りで次のこと考えてないから、
それ見て打ち合わせやって、次をバンと書くわけ。
で、編集が読みに来てOKだったら持ってくし、
ダメだったら書き直しするし、
で、その繰り返しでとにかく連載中に5年間?、
原先生とは仕事の話一切したことないし、会ったこともない。
とりあえず、あいだに全部編集がいるわけ。
年に2回だか3回パーティーがあるじゃない、
手塚賞とか、そういうときに
元気?やってる?って挨拶だけ、
がんばろうねって話ぐらいで、仕事の話は一切しない。


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