●池上先生の魅力と池上先生に対する思いは?
男の色気だろうね。
立ち姿だけであれだけの男の色気ってのを出す人って、まずいないから。
そうすると台詞なくても立たせとけば、ちゃんと芝居になるっていう…、
そういう作家って、そうそういないからね。
そりゃあだから、俺がずっと独占しているあいだ、
他の原作者って、本当に俺をぶんなぐろうと思ってんだよ、
きっと。
原作者であれば、一度は組んでみたい作家だと思うだろ。
池上先生が入院してるときに、見舞いに行ったら、
池上先生の奥さんが出て来て、
史村先生、先生があたし達の米びつ握ってるんだからねって言われて(笑)、
どうしようと思ったもんな、俺(笑)。
今は、「あ、うん」の呼吸っていうのは出来てはいるよね。
だから正直言うと、俺は逃がしたくないさ。
ずっと池上先生と組んでいたいんだよね。
問題は池上先生の中で、俺に飽きて来たら、
当然、池上先生はチョイス権があるわけだから、
それを絶対そうはさせないっていうものを書いてないといけないわけ。
それはそれで、やっぱりプレッシャーだよ。
逃がしたくないっていうある種の恋愛関係だからね。
でも、池上先生がやっぱり俺に飽きて、
他に行くっていうこと、十分考えられるからな。
俺はあっちこっちで浮気してるわけだから(笑)。
池上先生はずうっと俺しか組んでないわけだから、
そりゃあ、実に不公平だよね。
俺は浮気しまくっているわけだから、水野トビオあたりと(笑)。
だからよく考えれば、すっごく我がままなことなんだよね。
いつ、池上先生が、他行っても、おかしくないんだけど…。
やっぱり、量的な問題もあるからね、池上先生も。
で、あと自分で好きなもの描くでしょ。
描きたいものってあるでしょ、それを現実にやってたし…。
だから、いい状態ではあったんだよね。
たまたま仕事の量的にもね。
他にふやせられなかったし…。
●『HEAT』に関しては?
『HEAT』は、池上先生からの希望は最長。
『サンクチュアリ』を超えよう、
長さだけでも、もっと長くやろうよってことでね。
まあ、それは約束どおりなんとかクォリティー落とさないで来れたから。
ただ、池上先生も俺も、もう現代劇はいいよねって…。
(『HEAT』自体は主人公を美形で押し出していますが、
そのへんは池上先生の好み?)
そうだね、うん。
ずっとかっこいい大人を描いてたから、
ちょっと若くしてみようってのはあったよね。
だから描いてて池上先生が乗って来るのは、青年?
若い18歳前後の登場人物出して来るとすごく新鮮みたいで、
そっちのほうへ少し話を持ってったこともあるよね。
今までと違ってもう少し若い人たちの話って。
(『HEAT』でもそうですが、先生のストーリーにはヤクザがよく出てきますよね?)
しょうがないじゃん、だって俺、ヤクザしか書けないんだもん(笑)。
ストーリーでヤクザ書くと話がピシッと締まっちゃうんだもん。
池上先生が時々冗談で、
あなたは極道書かせたら本当にうまいねって(笑)。
(どういうところから知識を?)
いや、全部、頭の中だよね。
だけど小山ゆう先生なんかは、
絶対、俺のブレーンに本物がいると思ってるからね(笑)。
ヤクザってね、男の延長なのよ。
まだ、男っぽさを前面に出して生きて行ける世界ってのが、
ヤクザの世界だってのがどっかである。
上下関係から…、男と男の関係、
まだ男ってのが売り出し方だけで張り合っていける世界が、
ヤクザの世界じゃないかって…。
錯覚かもしれないけど、
どっかで、そういうふうに俺も思っているし、
見る側も思ってるんじゃないかな。
だから、そういう形で書いて行くと、
ポンとハマってしまうというのがあるのかな。
現実は違うかもしれないけど…。
(昔見たヤクザ映画の影響?)
うん、それは残ってるよ。
それね、多分当たってると思うんだけど、
今だってハリウッドとか日本の映画でもなんでも、
一番作りやすいのはヤクザか刑事ものなの。
ねっ、どっちかでしょ。
刑事もそうだろうし、ヤクザもそうなんだけど、
やっぱりまだ男っていう生き方でストーリーが展開出来る世界が、
まだ頑にそういう世界が残ってるんじゃないかって…。
そこが作りやすいから、映画もそこを作るんじゃないかってさ。
アメリカだって、マファア、刑事ものって、だいたいそうじゃないか。
必ず男っぽいでしょ。
やせ我慢したり、友達のために死んだりとか。
やっぱり、その世界って書きやすいんだよ。
だけど、それは簡単に言えば、
書きやすいところに逃げてるだけかもしれないけどさ(笑)。
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