●『HEAT』での漫画賞受賞。おふたりとも初めての受賞だったんですね?


これはね、誰も信じてないの。
池上先生もどっかで取ってると思われてるし、
俺もどっかでもらってると思われてるわけ。
ところが本当にふたりとも初めての…、
講談社、小学館含めて初めての受賞だったでしょ。

みんなでびっくりしてるのよ。
本当に初めてですかって(笑)、そうなんだよね。
だから、池上先生と組んで一つ責任というかホッとしたのは、
それが一番大きかったね。
ずっと10何年組んでて、
どっかでやっぱり取らないといけないというか、
取らすとかそんな傲慢な言い方じゃなくて、
とりあえず池上先生といい酒飲みたいなってのがどっかであったからね。
本当によかったなと思うよ。
『サンクチュアリ』で取れなかったから、
ある程度、半分くらいは諦めていたんだけどね。

だから、みんなが喜んでくれて本当にうれしかったよ(しみじみと)。
ふたりとも暴力作家って、どっかでレッテル張られてるからね。
そういうのを嫌う人っているからね、仕方ないんだけど…。


●池上先生とのコミュニケーションは?

年に1回か2回、飲み会っていうか、
次にどういう展開をやろうかってのを話しながら飲む機会があって…、
でも、お互いがお互いのところを踏み込んじゃいけないってのを
わきまえてる大人同士だから、要求って形じゃないよね。
こんな形いいんじゃないのとか、こんなもの描きたいなとか、
なんかそういう自分の希望を語るだけであって、
こうしようよ、ああしようよって話は、
お互いにないんだよね。
それはもう、絶対これ以上踏み込んじゃいけないって部分を
お互いがわかってるから、まあ、当たり障りのない、
ただ方向的にこんな方向に行こうかって話はするけど、
具体的なものはまずないね。

いつものパターンだけど、俺だいたい酒で崩れて行くわけ(笑)。
だから最初の10分くらいそんな話はするんだけど、
途中からはもうグズグズグズって(笑)。


●原作に対しての池上先生からのメッセージなどは?

もうわかるのよ、絵を見れば。
俺があんまり乗ってないなって話を書いたときに、
池上先生も全然乗って来ないから。
で、俺がよっしゃこれだ!っていうと、ものすごいいい絵入るから。
それはもうね、おっかないぐらい…、反応するから。
だからちょっと流す回とかあると、やっぱ全然…、
あー、池上先生、怒ってるって感じる(笑)。
おっかねえ、おっかねえ。
そのかわりよっしゃ!っていうときはすごい絵入れて来るからね。


●4回も組んでいる作家さんは珍しいですよね

1人、3回組んでいるヤツもいるけどね(笑)。
水野トビオ。


●池上先生との作品の一方ではヤンマガでコメディーばかり、反動ですか?

うん、やっぱり、同じ系統のものは書けないよ。
やっぱり片一方で、固いの、硬派なのをやってたら、
片一方では軟派っていうか、少しコメディー書きたいなって…、
基本的にコメディー好きだからね。


●3度の水野トビオ先生と4度の池上先生に共通点みたいなものは?

ないでしょ!!(笑)

不思議だよね。あのね…、トビオはね、
やっぱりあの絵好きなのかな、俺。
池上先生ってまったく写実的に描くでしょ。
で、水野トビオって、まったく逆でしょ。
ヘタヘタでしょ。
ヘタウマでもなく、ウマヘタでもなくて、
ところがヘタヘタの中に、すっごい…、
キラッキラッと光る妙な味があるのよ。
俺が感じるものなんだけど、
それがねえ、どうにもこう…、愛おしいのよ、
愛おしいっていうか、なんて言うのかな…、
なんか妙にかわいいとかさ、そんな感じなんだろうね。

(池上先生という超特級の絵を見慣れているから、
 普通にうまいんじゃ満足できないんじゃないですか?)


それもあるかもね、うん。
だから、なんかどんな味が出るんだろうってところで、
水野トビオは意味不明、わかんないところがあるじゃない。
そのわかんないところにひかれてる可能性はあるよね。
うん、中途半端じゃないっていうところかな。

だから割とホッとするよね、トビオとやるとね、逆に。
当たらないんだけど、俺、『フーセン』なんて大好きだからね。
トビオと組んで、自分のことを自虐的なネタにして書いてるの、
大好き(笑)!

(それはある意味、趣味の世界に行ってるのではないでしょうか…)

【編集メモ】

* 『フーセン』 2000(H12)年 3号〜19号 講談社 ヤングマガジンアッパーズ 漫画/水野トビオ
  お笑いC級芸能プロ・ストーリー。


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