池上先生と組んでいると比べちゃうから、他の漫画家かわいそうだよね。
たまに、池上先生的な絵を描く人とやりませんかって来るんだけど、
やっぱりね、どうしたって比べちゃうと、
本家じゃない、池上先生は。
他はどうしたって亜流っていう見方しか出来なくなるでしょ。
失礼って言うか、そういう目でしか見れなくなってるから、
やっぱり断るしかないなってのはあるよね。
中途半端にうまいっていうのは、
なんて言うのかな…、こっちは全然触発されないから。
だって劇画系の絵っていうのはさ、
俺、もう、ながやす巧先生と組んでいるでしょ。
池上先生と組んでいるでしょ。
もうこのふたりにかなう人っていないのよ。
絵の完成度からすると、もうそのふたりと組んじゃってるから、
写実的なそのすごい絵の人と組んじゃってたら、
やっぱり他のそういう作家さんと組んで、
じゃあ俺がテンション上がるか、モチベーション上がるかっていうと、
そうそう上がらないからね。
特級を味わっちゃってるわけだから、やっぱり俺自身もきついよね。
そうするとやっぱりコメディーしかないんだよな、俺。
他に行くにはね(笑)。
それで水野トビオに行っちゃうと(笑)。
だからそのあと、ほとんどコメディーじゃないの、少年誌以外は。
でも本当に、ここんとこずうっと池上先生に助けられてるからなぁ、俺。
だってほら、池上先生と組んだもの以外、全部こけてるわけだから、
俺、ここ何年も。
(新人さんと組むことも多いですよね、描ききれないんじゃないですか)
そういうんじゃなくてね、さっきの特級ふたりと組んじゃってるから。
新人の…、可能性?
新人って、無限の可能性があるわけ。
そっちのほうとやったほうがやりやすいってのもあるよね。
色が付いていないから、俺流の色で書けるから…。
ただそれがうまいこと、なかなか機能するの難しいから、
苦戦はしてたけどね…。
かわいそうだよね、どうしても池上先生の絵を想定して描くからね、
そのストーリー。
若い漫画家はつらいよね。
意識してなくても、見栄を切る、かっこいい台詞ってのは、
どうして池上先生の絵のかっこいい顔で、
頭の中でイメージ出ちゃうから、
立ちポーズとか、かっこいい台詞をポンと入れたときにね。
そうすると出て来るとやっぱり違うって感じだよね。
どうしてもキャラクターと台詞が合わなくて、台詞が滑っちゃうから。
それは、やっぱり若い漫画家は仕方がないよね。
だから、とりあえず池上先生を怒らせないように、怒らせないように
捨てられないように(笑)しなきゃいけない。
池上先生はいい人だけど…。
でも、手を変え品を変え、なんとか繋ぎ止めたからな。
俺もえらいよな(しみじみと)。
池上先生の本音はわからないけど、
飽きかけると俺がなんかまたコロッとやるからな。
あとは興味のある原作者が少なくなってるってのもあるかもな。
すごいのが出てたら、池上先生自身も、
ちょっとあの人と組みたいってのが出て来るかもしれないけど、
俺以降にそんなに出て来てないから。
そんなこと言って油断してると、
ポロッともってかれちゃうかもしれないけど(笑)。
みんな、虎視眈々と狙ってるからね。それは、原作者はね。
●スペリオールでかなり長いですね。ふたりで他誌では?
ない。だから不思議でしょ。
俺は何処でもいいわけよ。
ただ、池上先生はそんなに欲がないんで、なんていうのかな、
本当に義理堅い人だから、ずっとそこの雑誌をやってて、
あえてもっと売れてる雑誌へこのまま動こうとか、
そういうのは一切ないんだよね。
そういうことすると、
いろいろな人に不愉快な思いをさせたり、なんかあるじゃない。
そういうことを本当に嫌がる人っていうか、
そこまでしてやるのはよしとしないって人だから、
俺がよく冗談で、
池上先生、講談社ふたりで行こうよとか言うんだよね(笑)。
でも、池上先生、困ったような顔してるよ。
でも本当不思議だよね、(10数年)ずっとスペリオールだからね。
(それだけ居心地がいい?)
あー、そういうことかもしれないね。
ただ、数字的なことを言うと、オリジナルでやってたりとかしたら、
雑誌の部数全然違うわけだから、
単行本の売れ方とか、全然違うとは思うんだけどね。
でも池上さんも俺もそんなにこだわんないんだよね、
そういうところはね。
※本文中( )内の表記、および[編集メモ]漫画街。氏名敬称略。
記録に誤りや漏れなどありましたら、ご指摘ください。
(第8回 終)
★次回は『3社以外の作品』のお話をお聞きする予定です。お楽しみに。
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