【キャラクター作りについて】


●先生にとって魅力あるキャラクターとは?

それは…、いっつも模索して作ってるから、
こうだってのはないんじゃない。
毎回、そのつもりで書いてるけどハズれることもあるし、
その図式は持ってないね。

(定義みたいなものは?)

定義はない。
ただ、本当に一つだけこだわるとしたら、ダンディズム?
俺が男を書く場合、多分ダンディズムかな。
かっこよさだよね。
こだわるのは、やっぱりかっこよさ、生き方の。


●自分の主人公を魅力的に見せるためにストーリーの中で
 必ず心掛けているようなことなどありますか?
 (主人公に絶対させること、させないことなど)


女、子供は殺させないよね。
多分、今までの作品の中でも、
女、子供は一切殺していないんじゃないかな。
俺の主人公。

それとあとは、詰まってくると、
必ず主人公よりかっこいい悪役を出してくるよね。
で、その悪役が人気出て来たら、
主人公も引っ張られて人気出てくるよね。
だから、サブキャラだよ。
サブキャラがうまく出来上がると、主人公もうまく引っぱられてくる。
主人公を最初作るんだけど、
そのストーリーが完成するか、いいストーリーになるかっていうと、
サブキャラクターの悪役が、
何処までかっこよく描けるかってところがある。
だから、ヒットした漫画って全部悪役がかっこいいね。

主人公って意外とさ、寡黙で、あんまりしゃべんないんだよ。
全部、リアクションで芝居になるの。
自分からアクティブにそんなに動かないの、
俺のキャラクターは。
周りが…、悪役が動いて、
それにリアクションで動いてくるパターンだから、
迎え打つパンチでしょ。
最初から打つパンチじゃなくて。
そういう作り方してるからねぇ。
あんまり攻撃的な主人公作れないよ、俺、よく考えたら。
攻撃的っていうか、自分から仕掛けて行くっていうのは、
あんまり得意じゃないのかな、俺。

ヤクザ映画だよ。
東映のヤクザ映画で、高倉健がそのパターンだよね。
でも、そのパターンって結構王道だと思うよ、
ストーリー作りの。
なんて言うのかな、わかりやすいエンタテインメントで、
マカロニ・ウエスタンにしてもそうでしょ。
最初、かっこよく出て来て、絶対なんかあってやられて、
耐えて耐えて、最後にドンと行くって。


●先生の原作の中では、主人公像はかなり描き込みますか?
 見た目とか含めて。


ううん、それは絵描きさんの領分だから。
だから、まず原作渡して、何枚か描いてもらうでしょ、
キャラクターイメージを。
それから、こんな形はいいかなって打ち合わせはやるけど、
俺自身、絵を描けないから、ああだこうだ言ったって、
それは失礼でしょ、ある意味で。
ただ、大きくとか小さくとかは言うけどね。
サブキャラとかは、これはでかくしてくれるとか、
こっちは長髪にしてくれとか、
そういうのはバランスとして考えて言ってるけどね。

(最初から阿部寛みたいに描いてとか言うのは?)

それはない。
あ…、ときどきやるかな。
サブキャラっていうか、
新しいキャラクター、悪人のキャクター達には、
イメージとしてこんな感じかなっていうのはやるかな。


●自分の原作とマンガ家の描くキャラクターのイメージが違ったときの対応は?

合わないときはねえ……、ストーリーが違うほうに行くよね。
一生懸命、そのキャラクターを最初は動かそうとするんだけど、
どうしても動かないとなったら、
そのキャラクターをわりと
殺しちゃったりするかも知れない(笑)。

(サブキャラならそれでもいいのですが…)

主人公だったら…、1年で連載止める(笑)。

やっぱり、短期連載で終わると思う。
特に新人なんかの場合は、こっちが無い物ねだりしても
しょうがないところがあるでしょ。
そうこうしているうちにお互い疲れちゃうよ、
イメージが違いすぎて。
向こうは向こうで一生懸命描いてるのに、
俺が無理難題を書くでしょ。
わざと苦手なとこやらそうとするから…、
それで、やっぱりお互い疲れちゃうね。
だから、最初に見て、
このキャラクター違うかなと思ったときには、
話をまず変えるかな。
その主人公じゃない主人公を出してきちゃうとか、
荒療治やっちゃうかもね。

例えば、マンガ家が苦手な部分があると、
そこをなんとか先生が強くしてくれないかって形で、
編集に、特に新人なんかと組まされてやるでしょ。
でも結局、疲れちゃって、やっぱりうまくいかないの。
それで、考え方を変えたのは、
作家の苦手な部分を強くするんじゃなくて、
長所を伸ばす原作を書かなきゃダメだなって…、
ストーリーの途中から転換したのかな。

でも、本当はそれでは遅いの、どうしても。
だから、途中から気が付いたのは、俺が間違ってたかなって…。
それはさ、
そういうふうにさせた編集のチョイスミスもあるんだけど、
やっぱり最終的には、
苦手克服よりも長所を伸ばす原作のほうが、
マンガ家さんのことや作品のことを考えても、
そのほうがいいのかなって反省が少しあったな、ここ何年か。

うまく行かなかった作品に対しては、
やっぱりかなり反省点はあるよ、こっちのね。
でも、その人たちがそのあと、
自分のオリジナルを始めて漫画が変わったとか、
漫画の中でキャラクターがすごく動くようになったとか、
そういうの聞くとうれしいけどね。


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