●原作者仲間で今ともに語り合える作家さんはいますか?


やまさき十三さんだけだね。
それはもう、公私ともにいろいろな…、
酒飲み友達だし、ゴルフ友達だし。
仕事のことはあまり喋らないけど、
最近仕事どーお?ぐらいしか。
お互いの作品には一切タッチしなくって…、
ただ、いつも気になってるからね、何書くか。

最初からだね、仕事に関してはあんまり話さないね。
ってのは、お互いが苦労して原作書いているの知ってるから。
分かってるがゆえに、最近調子悪いねとか言えないのよ。
俺だって言われたらへこむしね。
そういう気を遣いあってるから、仕事の話一切しないね。
ただ、酒飲んで、ゴルフやって、バカ話して、
遊んでるだけだね。
でも、そういう存在があるからすごい楽よ。
いざ困ったときに相談できるかなって…、
いざ、本当に困ったときにね。
そういう人がいるんで、それはもうすごい助かっているけどね。


(出会いは?)

本当にね、あの人も遅れてきた新人でしょ。
東映の助監督やってたの。
俺はほら、本宮(ひろ志)んところにぶら下がって、
原作書き出してたでしょ。
十三さんは、助監督やったりシナリオ書いてたりしてたでしょ。
で、小学館の編集が大学の仲間だったんで、
原作でも書いてみないかっていうことで、
原作書き始めたわけで…。

だいたい一緒なのよ、状況が。
友達に誘われて原作の道に入ったって人で、
だいたいデビューしたときが一緒で、
で、俺は武論尊っていうわけのわかんないペンネームでやってて、
十三さんも「剣崎慎一郎」っていう訳の分かんない(笑)
名前で書いてたのよ。

面白いな、この人の原作、誰なんだろうって言ってたら、
やまさきさんだって言うんで。
それで、あるとき飲み屋の席で、あ、どーも、やまさきです。
どーも、武論尊ですって話になって…。
それから、たまたま俺が『ドーベルマン刑事』で
ポーンとなって、
で、しばらくしたら十三さんが、
『釣りバカ日誌』でドーンとなって、
お互いに良かったねって感じで。
だから、本当に二人とも、
なんて言うのかな、同じ時期にうまくいって…。

【編集メモ】

*『無頼記者シリーズ/球魂/球愛/球怨/球情』
 1976年、1977年 小学館ビックコミック 漫画/園田光慶 原作/剣崎慎一郎
*『ふたりの甲子園』1976年 小学館 週刊少女コミック 漫画/あだち充 原作/剣崎慎一郎
*『あとの祭り』1979年 小学館 ビッグコミック 漫画/大島やすいち 原作/剣崎慎一郎


十三さんのほうがちょっと年上なんだけど、
ただまあ、俺はもうため口きいてるけどね。
本当は十三さん、怒ってるかもしれない(笑)。

人間的にすごいいい人。
物書きってだいたい女でしょ、性格が。
やまさき十三さんは性格が男なんだよ、意外と。
くよくよしないし。
性格がまったく違うと思うよ、俺と。
他の作家さんに対して、嫉妬とか妬みとか、
そういうのまったく起こらない人かもしれない。
だから、すごい楽。一緒にいて楽しいし。

だから、仕事の話はまったくしないけど、
最後の最後、本当に困ったら、電話するかも知れないけど、
十三さんも多分俺にはしてこないんじゃないかな。
されても困るかなってのもあるかな、お互いに(笑)。
俺だっていっぱいいっぱいなんだから!(笑)

本当に、まあ、当たったからだね、
お互いが生き延びてきたから、よかったよね。
酷な世界だから…、例えば落ちていく仲間がいるでしょ。
手を差し伸べられないわけ。
いくら手を差し伸べようが、
そんなもので生き残れる世界じゃないから。
そうすると、やっぱりいつの間にか疎遠になっていくわけでしょ。
やっぱり、どうしても関係ぎくしゃくするでしょ。
例えば、パーティーで会って、
片方はだんだん仕事が少なくなってくる。
で、片一方は脚光を浴びてくる。
そうすると、やっぱりお互いの関係がぎくしゃくするんだよね。

俺が男性的な性格で、
そんなこと一切関係無しにやれるタイプだったらいいんだけど、
なんせ俺、性格が女だから(笑)。
なんて声かけたらいいかわかんなくなってくると、
やっぱり、ちょっと眼をそらせちゃったりするのよ。
いけないことなんだろうけど…。
そういうことがあるとさ、むこうもむこうで、
俺の性格わかってるから、
あ、なんか、話しにくいかなってとこあるわけ。
もちろん、むこうが男だったらいいんだけど、性格がね。
そうすりゃ平気でつきあえるんだけど、
いかんせん女同士だからさ、みんなさ。
そういうとき、俺は人間ちっちぇーなって思うよ(しみじみと)。
人間ちっちぇーからものが書けたんだって、
開き直って言ってるけどね(笑)。


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